【がん】メチオニンの摂取制限はがん治療の有効性に影響する可能性がある
Nature
2019年8月1日
このほど実施されたマウスの研究で、アミノ酸の一種であるメチオニンの食餌からの摂取量を制限すると、腫瘍の増殖が抑えられ、化学療法や放射線療法の転帰が改善されることが明らかになった。また、ヒトにおける原理証明研究において、食餌に含まれるメチオニンの量を低下させることで代謝に及ぶ効果は、マウスの場合と同様のものであり、低メチオニン食に対する反応がヒトとマウスの間で保存されている可能性が示唆されている。この研究結果を報告する論文が、今週掲載される。
必須アミノ酸(体内で産生できないアミノ酸)であるメチオニンは、代謝において重要な役割を果たし、1炭素代謝という一連の反応において代謝されるが、これらの反応は、化学療法や放射線療法などの数々のがん治療の標的にもなっている。しかし、これらの療法の標的となっている代謝経路が、特異的な食事介入によって影響を受けるかどうかは分かっていない。
今回、Jason Locasaleたちの研究グループは、食餌におけるメチオニンの摂取制限が、1炭素代謝を標的とする他の治療法との相互作用を通じて抗がん作用を有するのかどうかを調べた。Locasaleたちは、一連のがんモデルのマウスにおいて、マウスの食餌中のメチオニン濃度を低下させると腫瘍の増殖が抑制されることを発見した。化学療法薬5-フルオロウラシルや放射線療法を併用した場合にも、腫瘍の増殖は抑制された。
また、6人の健康な中年被験者を対象とした予備的臨床研究も行われ、3週間にわたって被験者に低メチオニン食(1日のメチオニン摂取量を83%減少させたもの)を与えた。Locasaleたちは、被験者の代謝物濃度が、同じ食餌制限を受けたマウスで見られた濃度と相関することを明らかにし、この知見が、特異的な食餌療法が、がんの転帰に影響を及ぼす可能性のあることを示す証拠になるという考えを示している。
doi:10.1038/s41586-019-1437-3
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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