古生物学:スピノサウルスは泳ぎが上手だった
Nature
2020年4月30日
スピノサウルスという恐竜の分類群は、他の非鳥類型恐竜とは異なり、水中での生活に十分適していたとする考えを示したNizar Ibrahimたちの論文が、Nature に掲載される。この学説は、保存状態の良好なスピノサウルス(Spinosaurus aegyptiacus)の尾部化石の分析に基づいている。
スピノサウルスは、かつて繁栄した大型の捕食性恐竜の分類群で、5000万年にわたる化石記録が存在する。このIbrahimたちの論文には、モロッコ南東部にある9500万年前のケムケム地層で発見された亜成体のスピノサウルスのほぼ完全な尾部が記述されている。スピノサウルスに関しては、これまで不完全な化石だけが解明の手掛かりだった。また、これまで発見された唯一の関連化石標本は、第二次世界大戦中に破壊されてしまった。これに対して、Ibrahimたちが分析した化石は、アフリカ大陸でこれまで発見された中で最も完全な白亜紀の獣脚類の骨格化石である。
この化石からは、スピノサウルスが一連の非常に長い神経棘によって形成された独特な形状の柔軟な尾を持っていたことが明らかになった。そして、モデル研究によって、この水かきのような尾が、柔軟性を備え、左右に動いて推力を生み出せることや、スピノサウルスが現代のクロコダイルと同じような方法で水中を移動していたことが示唆された。スピノサウルスが水中で生活していたという考えは決して新しいものではなく、スピノサウルスは、水中を歩き回り、海岸近くで魚を捕まえていたことが、以前の研究によって示唆されている。しかし、特殊化した尾が生み出す推力による移動を示す新しい証拠が明らかになったことで、スピノサウルスが水中で獲物を探していたことが暗示された。
doi:10.1038/s41586-020-2190-3
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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