医学研究:SARS-CoV-2感染の特徴を10人の小児で評価する
Nature Medicine
2020年3月14日
新型コロナウイルスSARS-CoV-2に感染したと診断された中国の小児10名は、COVID-19の呼吸器症状が軽度だったことが、Nature Medicine に掲載された論文で報告されている。この研究ではまた、ウイルスが鼻腔スワブ(ぬぐい液)や咽頭スワブよりも糞便検体の方で長期間にわたって検出されることが示されている。しかし、小児での感染を臨床的、疫学的にもっと詳しく理解するには、対象人数をもっと増やした研究が必要であろう。
SARS-CoV-2とそれによる呼吸器疾患COVID-19は2019年12月に出現し、2020年3月12日の時点で感染が確認された症例は世界で12万5048例に達し、死者は4613人に上っている。成人のSARS-CoV-2感染初期段階の疫学的および臨床的特性については報告があるが、小児の感染について調べた研究は、これまでわずかしかなかった。
今回、K Zhang、H Xiaたちは、中国の小児745人でSARS-CoV-2感染のスクリーニングを行った。これらの小児のほとんどは陽性と診断された患者と濃厚接触があったか、家族内感染が報告されている家族の一員である。そして、男児6人、女児4人の10人(1.3%、年齢は2か月から15歳)がウイルス陽性と判定され、SARS-CoV-2感染治療センターに収容された。
7人に発熱(全員39℃以下)があり、一部に咳嗽、咽頭痛、鼻閉がみられたが、それ以外の症状(成人患者で広くみられる筋肉痛や頭痛など)はなかった。これらの患者が見つかり、診断されたのは陽性者との接触歴からであり、何らかの医療措置が必要とされたからではなかった。さらに、胸部X線写真でも、成人患者で感染の決定的な特徴となる肺炎の明らかな兆候は見られなかった。このように症状が軽度なことが、小児のSARS-CoV-2感染例の早期発見と隔離を難しくしているのではないかと著者たちは考えている。
著者たちは、10人の患児全員について、鼻腔、咽頭、直腸でのスワブ検体を集めて分析し、気道と消化管からのウイルス排出についても調べた。8人の患児では、鼻腔、咽頭のスワブ検体がウイルス陰性になった後も、直腸スワブは長期間にわたってウイルス陽性だった。隔離の期間は、現在は鼻腔または咽頭スワブを使って判断されているが、今回の結果から考えると、治療の有効性や回復をより正確に判断するには、消化管の検査が有用かもしれない。一部の呼吸器系ウイルスと同様に、糞口感染が起こる可能性があるが、その可能性を確かめるには、糞便試料中のウイルスが複製できることを示す必要があると著者たちは考えている。
doi:10.1038/s41591-020-0817-4
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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