疫学:イタリアのでのCOVID-19大流行の動態を予測する新しいモデル
Nature Medicine
2020年4月23日
イタリアのCOVID-19大流行のデータを使って、この国でのパンデミックの今後の経過を予測する新しいモデルについての論文がNature Medicine に掲載される。このモデルは、感染を8つの段階に分け、また診断された人と診断されていない人とを区別して考えるもので、イタリアをはじめとする各国の政策立案者が、検査や接触の追跡だけでなく、ロックダウンやソーシャルディスタンシングなどの可能と思われる戦略の効果を評価する手段となりそうだ。この研究により、すでに採用されているソーシャルディスタンシングという方法は必須かつ有効であり、最も早い段階で速やかに施行すべきであることが明らかになった。また、ロックダウンを安全に解除できるのは、広域にわたる検査と接触者の追跡が行われている場合に限られることも示唆された。
COVID-19の世界的なパンデミックを終息させるには、全人口規模の複数の戦略を実行する必要があるが、こういった戦略の有効性や、「感染拡大のカーブを平坦化する」ことができるかどうかについては確かでない。
G Giordanoたちは、COVID-19パンデミックの新しい疫学モデルを構築し、「SIDARTHE」と名付けた。このモデルでは、検出された(確定診断された)症例と検出されていない(確定診断されていない)症例とを区別し、また病気の重症度によっても分類する。Giordanoたちは、病気の8つの段階を想定し(モデル名のSIDARTHEは各段階の頭文字をつなげたもの)、それに当てはめて集団を区分けした。すなわち、感染する可能性がある(感染していない);感染している(無症候性またはほとんど症状のない感染で、検出されていない);診断されている(無症候性感染、検出されている);病的状態(症候性感染、検出されていない);認識されている(症候性感染、検出されている);重症化(命にかかわる症候性感染、検出されている);治癒(回復している);死亡の8つである。
そして、2020年2月20日(第1日)から2020年4月5日(第46日)までのイタリアのデータを用いて、2020年3月9日以降に発令された最新のロックダウンを含め、段階的に強化されてきた制限が、イタリアのパンデミックの拡大にどのように影響したかが明らかにされた。また、ソーシャルディスタンシング、接触の追跡や全人口規模の検査といったさまざまな対策の効果について、起こり得る長期的展開がモデル化された。このモデルは、実際の同時期感染者の数がピークに達するのは第50日前後で、その時には集団の0.19%が感染しているが、検出された同時期感染者の数がピークとなるのはそれよりほぼ1週間程度遅くなると予測している。
これらの知見から、診断推進キャンペーンは感染のピークを下げ、パンデミックの終息を速めるのに役立つという仮説が確認された。このモデルは、医療システムがその受け入れ能力の限界に達したり、限界を超えたりしたために医療が十分に受けられなくなることは考慮していないが、著者たちはこのような分析は間接的に行えると述べている。例えば、重症者数が多くなれば、集中治療室(ICU)の数が不十分なことが原因で、致死率が高くなるだろう。
また、ロックダウンを部分的に実施すると、同時期感染者の数がピークに達する時期とICUに収容される患者数がピークに達する時期が遅くなるが、感染者の総数とICUに入る患者の総数は中程度の減少にとどまることがわかった。逆に、ソーシャルディスタンシングという戦略を非常に強硬に実行すると、同時期感染者数のピークとICUに入る患者数のピークが予想通り低くなり、感染者の総数とICUに入る患者の総数がともに大幅に減少する。Giordanoたちは、緩めのロックダウンなら最初の1年間での死者は7万人、それより厳しいロックダウンなら2万5000人になるだろうと推定している。
doi:10.1038/s41591-020-0883-7
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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