社会科学: COVID-19パンデミック対応を管理するための社会科学的洞察
Nature Human Behaviour
2020年5月1日
COVID-19のパンデミックの影響を緩和するためには緊急の対策が必要だが、これを支えるのは社会科学・行動科学であると、Nature Human Behaviour に掲載される論文で43人の研究者が主張している。著者たちは、パンデミックに対する効果的な対応について、個人および政策決定者たちに既存の研究に基づいて提言しており、今後数週間から数か月間に埋める必要のある研究上の重要なギャップを指摘している。
現在のCOVID-19危機では、個人に大規模な行動の変化が求められ、大きな心理的負担が強いられているため、社会科学や行動科学からの洞察は、人々の行動を、疫学者や公衆衛生の専門家による提言に合わせるのに役立つ。
今回、Jay Van Bavelたちは、政策立案者、地域社会のリーダー、一般市民が、脅威に対処する方法、多様な社会的・文化的状況に対応する方法、科学コミュニケーションを改善する方法、個人および集団の利害を調整する方法、効果的なリーダーシップを採用する方法、社会的・情緒的な支援を提供する方法を、よりよく理解するのに役立つよう、現在のパンデミックのさまざまな段階に関連するトピックについて論じている。
著者たちはまた、一般市民に対して総称で話しかけ、〈私たち〉が公益のために行動するように促すことが、個人間やコミュニティー間の協力を促進して、差別と闘うのに役立つ可能性があると示唆している。Van Bavelたちはさらに、前向きな行動を奨励することは、社会的承認への期待と相まってより効果的であり、感染を遅らせることの重要性を鑑みれば、他者が予防的措置をとることが自分たちにも大きな利益をもたらすと1人1人に認識してもらうことが助けになるかもしれないと述べている。そして地域社会のリーダーや報道関係者は、COVID関連対策が存在する場合には、それに対する超党派的な支援を強調すべきであると指摘している。
そして、著者たちは、社会から取り残されているコミュニティーにおいては、より的を絞った公衆衛生情報の必要性、そうしたコミュニティー内での公衆衛生当局と信頼のある組織と間のパートナーシップの必要性を強調している。また著者たちは、説得力のある公衆衛生に関するメッセージの伝達は、メッセージの受け手の利益を明確にし、他者の保護に焦点を合わせ、受け手の道徳的価値を同調させ、社会的コンセンサスに訴え、社会集団の承認を強調すると論じている。
著者たちは、人々がフェイクニュースを吹き込まれることに対しては、一般市民に対して誤情報に気をつけるように促し、自分たちが正確な情報を得ているのだと確信させ、誤った情報や陰謀論に対する反論を提供することが役立つかもしれないと述べている。また、人々が物理的に離れていても社会的につながることはできるため、「ソーシャル・ディスタンシング(社会的な距離の確保)」よりも、「フィジカル・ディスタンシング(物理的な距離の確保)」という表現の方が望ましいとも主張している。
doi:10.1038/s41562-020-0884-z
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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