創薬:抗SARS-CoV-2薬の標的とその阻害剤の相互作用が結晶構造から明らかになった
Nature Structural & Molecular Biology
2020年5月8日
COVID-19治療薬の開発にとって有望な化合物として特定された化学療法薬「カルモフール」とSARS-CoV-2との間の分子相互作用が記述された結晶構造論文が、Nature Structural & Molecular Biology に掲載される。この新知見は、SARS-CoV-2に対する作用を強化したカルモフール誘導体の設計の基盤となる可能性がある。
SARS-CoV-2ウイルスの複製を阻止し、患者におけるウイルス感染の進行を止める薬物の探索が研究者によって進められており、以前、SARS-CoV-2のメインプロテアーゼ(Mpro)がこの種の治療薬の標的候補として特定されている。Mproは、ウイルス複製に関与する酵素である。これまでにHaitao Yangたちの研究チームは、1980年代以降に大腸がんの治療に用いられ、乳がん、胃がん、膀胱がんの治療に臨床上有益なことが示されている承認薬カルモフールの室内実験を行って、Mproを阻害できる化合物として突き止めた。しかし、カルモフールがMproを阻害する過程を分子レベルの詳細についてはよく分かっていなかった。
今回、Yangたちは、カルモフールに結合した状態のSARS-CoV-2 MproのX線結晶構造を示している。この構造から、カルモフールがSARS-CoV-2 Mproの触媒性システイン(Cys)残基 145を直接修飾することが明らかになった。このことと、Mproの結晶構造によって解明されたカルモフールとMproとの相互作用の詳細は、より強力なカルモフール誘導体の設計の基盤となる可能性がある。さらにYangたちは、Mproは全てのコロナウイルスで保存されている配列であることから、カルモフール、そしてカルモフールから開発される薬物が、広範なコロナウイルス感染症に効果があると考えられると結論している。
doi:10.1038/s41594-020-0440-6
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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