免疫学:SARS-CoV-2に対する抗体の検出法
Nature Medicine
2020年5月13日
患者の血液中に存在する抗SARS-CoV-2ウイルス抗体を検出する方法が、Nature Medicineに報告された。この方法は16人の患者で検証されており、SARS-CoV-2に対する抗体が血漿中に含まれる患者を特定するのに役立ちそうだ。また、抗SARS-CoV-2抗体は他の患者の治療に使えるかもしれない。
SARS-CoV-2のRNAの存在を検出する検査法は、COVID-19の診断に広く用いられている。しかし、ウイルスに対する抗体の存在を調べる検査法は、集団内での感染率を明らかにするのに役立つと考えられる。
F Krammerたちは、SARS-CoV-2に対する抗体の存在を調べるのに使える酵素結合免疫吸着検定法を開発した。この測定法のために、Krammerたちはウイルスの表面に見られるスパイクタンパク質を使って2つのタンパク質を構築した。スパイクタンパク質は宿主細胞への侵入に関わっていて、他のコロナウイルス感染では抗体の標的となっている。構築体の1つ目は、スパイクタンパク質全体を含むタンパク質で、2つめは受容体結合ドメイン(スパイクタンパク質の一部分)だけを含んでいる。
SARS-CoV-2に感染した患者から得た血漿サンプルと血清サンプル(血漿と血清は血液の液体成分)を使って、Krammerたちはこれらのサンプル全てが、2つの型のスパイクタンパク質構築体の両方に陽性の結果を示すことを確認した。一般に、完全長のスパイクタンパク質に対する反応の方が強く出ることが明らかになり、タンパク質が大きいほど、表面に抗体結合部位が多く存在することが示唆された。SARS-CoV-2のアウトブレイクに先立って採取された血清サンプル50例(陰性対照群)を調べたところ、この方法で使ったタンパク質に対する反応性は非常に低いか、全くないことが分かった。
この検査法は比較的迅速に結果が得られ、簡単に実施でき、生きたウイルスを扱わなくてすむと、Krammerたちは述べている。ただし、今回の研究にはSARS-CoV-1やMERS(中東呼吸器症候群)-CoVに感染した患者由来のサンプルが含まれていないため、これらのウイルスに対する抗体でも陽性という結果が出てしまうかどうかは不明である。今後の研究では、もっとサンプル数を増やして行うことも必要だろう。
doi:10.1038/s41591-020-0913-5
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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