機械学習:AIモデルを使ってCOVID-19患者を迅速に診断
Nature Medicine
2020年5月20日
人工知能(AI)アルゴリズムを肺のCT(コンピューター断層撮影)画像と病歴に適用すれば、COVID-19患者を迅速かつ正確に見つけ出せることを示した論文がNature Medicine に掲載される。このシステムは、AUC(機械学習の正確さを表す指標)0.92を達成し、検出感度は経験を積んだ胸部放射線科医と同程度だった。
COVID-19の迅速かつ正確な検査法は緊急に必要である。現在使われている手法[SARS-CoV-2ウイルス特異的逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応法(RT-PCR)]は結果が出るまでに最長で2日かかることがあり、偽陰性の可能性を払拭するには検査の繰り返しが必要になる。それに、RT-PCR検査キットは現在不足している。胸部CTは、SARS-CoV-2感染が疑われる患者の診断に使える有益な手段だが、別の種類の肺疾患がある患者の一部では、CT画像だけでCOVID-19を除外することができない。さらに、COVID-19の初期段階にある患者では、CT画像が正常のように見えることがある。
Y Yangたちは、COVID-19陽性患者の診断を迅速に行うために、胸部CTの結果を臨床症状や曝露歴、臨床検査と組み合わせるAIアルゴリズムを使うことにした。まず、2020年1月17日から2020年3月3日までの間に中国の13の省の18の医療センターで905人の患者から集められたCTスキャン画像と臨床情報のデータセットを使って、AIモデルを訓練し、評価した。905人の患者の内訳は、男性が488人、女性は417人で、年齢は1~91歳、RT-PCR検査によってSARS-CoV-2陽性とされた患者は全部で419人だった。
Yangたちは、905人のサンプルのうち279例をテストセットとして、このAIモデルの性能を評価し、成績を2人の胸部放射線科医(経験豊富な医師と専攻医1人ずつ)と比較した。テストセット中のCOVID-19陰性145例のうち、113例はAIモデルと放射線科専門医の両方が正しく分類した。CTスキャン画像は見たところ正常だがRT-PCRでCOVID-19陽性だった患者については、AIシステムは25人のうち17人を正しくCOVID-19陽性と判定したが、放射線科医は2人共、これら25人の患者全員をCOVID-19陰性に分類し、AIシステムによってRT-PCR陽性患者の検出率が高まるという結果になった。
著者たちは、CTスキャン画像と病歴の両方が入手できる場合には、今回使われたAIシステムがCOVID-19患者の迅速診断の助けになると述べている。
doi:10.1038/s41591-020-0931-3
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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