人間行動:ロックダウン後のソーシャル・ディスタンシング戦略の評価
Nature Human Behaviour
2020年6月4日
ロックダウン後のCOVID-19の拡散を抑えるために設計された3つのソーシャル・ディスタンシング戦略(社会的距離確保施策)の有効性を評価した、一連のシミュレーションの結果について報告する論文が、このたびNature Human Behaviour に掲載される。
ソーシャル・ディスタンシングは、人と人との間の物理的な距離を保って社会的交流を減らすことでCOVID-19の拡散を抑えようとする重要な政策である。しかし、完全またはほぼ完全なロックダウンは、社会的、心理的、経済的に有害な影響をもたらす可能性がある。
今回、Per Blockたちは、対人接触のネットワークを制限することで、ウイルス拡散の抑制が達成できると提案している。Per Blockたちは、一連のコンピューター・シミュレーションによって、以下の3つのソーシャル・ディスタンシング戦略がCOVID-19の拡散に及ぼしうる影響の評価を試みた。すなわち、1)似たような人たちのみと接触する(例えば、居住地域や同じ組織に所属しているかで決定する)、2)コミュニティー内での接触を強める(例えば、共通の友人が多い場合にのみ友人と会う)、3)「バブル」の中で同じ人々との交流を繰り返す(特定のグループの人々との交流を制限する)である。
Per Blockたちは、これら3つ全ての戦略が、介入なしの場合や非戦略的なソーシャル・ディスタンシング(個人が交流を減らすが、接触相手は無作為に選択する)の場合と比べて、ウイルスの拡散を遅らせること、とりわけ「ソーシャル・バブル」が最も有効だと見いだしている。しかし、ほとんどの人々は、複数の社会的サークル(職場や家族・近縁者など)にまたがって交流することが必要であるため、研究チームは、これらの戦略の組み合わせの有効性についても検討している。その結果、複合戦略(2つの戦略の組み合わせ、あるいは3つ全ての戦略の組み合わせ)が、単独の戦略と同程度に有効であり、非戦略的接触よりも効果的あることが分かった。また、500~4000人を対象に戦略をモデル化したところ、相対的な有効性に差がないことが確認された。
Per Blockたちは、社会的ネットワークに基づいた戦略は、ソーシャル・ディスタンシングの有効性を高めて、社会的孤立の負の影響を緩和する可能性があると結論付けている。
doi:10.1038/s41562-020-0898-6
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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