疫学:COVID-19の感染率および重症度と年齢の関係
Nature Medicine
2020年6月16日
SARS-CoV-2が引き起こすCOVID-19に20歳未満の人たちが感染する確率は、20歳以上に比べるとほぼ半分だとする報告がNature Medicine に掲載される。この研究ではまた、10~19歳の感染者で臨床症状が現れるのは21%だが、70歳以上になるとこれが69%に高まると推定されている。COVID-19の伝播や重症度に年齢がどのような役割を果たすのかを解明することは、ソーシャル・ディスタンシングという介入の影響を知るのに重要なだけでなく、世界の感染症例数を正確に推定するのにも欠かせない。
報告されているCOVID-19感染症例中では小児の割合が顕著に低く、このことは小児は成人に比べて感染に対する感受性が低いか、感染しても臨床症状が現れにくい傾向がある、もしくはこの両方と考えれば説明できそうだ。
R Eggo、N Daviesたちは、6か国(中国、イタリア、日本、シンガポール、カナダ、韓国)の32か所から得られた人口統計データと、さまざまな年齢集団で感染率や症状の程度を推定した6つの研究の公表されたデータを用いて、COVID-19の年齢に基づく伝播モデルを開発した。著者たちはこのモデルを使って、COVID-19に対する感受性と臨床症状を同時に、年齢から推定することができた。そして、あらゆる地域にわたって20歳未満の人々の感染率は20歳以上の場合の半分程度で、10歳から19歳の若い感染者で臨床症状が見られるのはその21%だけであり、70歳以上の感染者では69%に臨床症状が認められるという推定が得られたのである。
著者たちはまた、世界146か国の首都でCOVID-19の大流行が起こった際のシミュレーションも行い、流行が抑制されない場合に予測される全症例数が、その都市の年齢中位数によって異なることを見いだした。つまり、高齢人口が多い都市ほど、1人当たりの臨床症例が多くなり、若年層の多い都市ほど無症状感染(あるいは症状が軽い感染)が多くなると見積もられた。しかし、推定される基本再生産数(1人の感染者が感染力を持つ間に、平均して何人の感染者を生じさせるか)には、年齢中位数によって実質的な違いはなかった。若年人口の多い国(多くの低所得国など)は、1人当たりの感染件数は少ないかもしれないが、低所得国に関連付けられている併存疾患が重症度に影響する可能性があると、著者たちは指摘している。
COVID-19のエピデミックの今後を実効的に予測し制御するためには、さらに研究を進めて無症状感染者や軽症者の感染力を調べる必要があると、著者たちは述べている。
doi:10.1038/s41591-020-0962-9
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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