疫学:がん患者でのCOVID-19の重症度
Nature Medicine
2020年6月24日
米国ニューヨーク市にあるがんセンターでCOVID-19に感染していると診断されたがん患者423人のうち、40%が入院し、20%が重度の呼吸器症状を発症し、12%は30日以内に死亡したことが、Nature Medicine に掲載された論文で報じられている。この研究によれば、進行がん、化学療法、最近受けたがん手術は、COVID-19重症化のリスクを上昇させないようだ。だが、免疫チェックポイント阻害免疫療法を受けた患者は、感染による呼吸器系の合併症により入院する確率が高かった。
ニューヨーク州では、2020年4月10日の時点でSARS-CoV-2に感染していると診断された患者9385人が死亡しており、そのうちの8.4%はがん患者だった。これまでに中国とイタリアで行われた研究では、がん患者はCOVID-19による死亡率が高いことが示唆されているが、この2つの病気が互いに及ぼし合う影響や、がんの積極的治療がCOVID-19の症状を悪化させる可能性については、ほとんど明らかになっていない。
M Kambojたちは、2020年3月10日から4月7日の間にニューヨーク市のスローン・ケタリング記念がんセンターでCOVID-19と診断されたがん患者423人について、人口学的特徴と臨床的特徴を報告している。患者の212人が男性、211人が女性で、大多数(56%)は60歳以上だった。患者の多くは、乳がん(20%)、大腸がん(9%)、肺がん(8%)のような固形がんと診断されており、その半数以上(65%)に転移性病変が見られた。血液がんで最も多いのはリンパ腫(11%)だった。患者の59%には、糖尿病、高血圧、慢性腎臓病、心臓病などの持病があり、これらも重症化に関連付けられている。重度の呼吸器症状のある患者は20%で、うち11%は高流量酸素療法を必要とし、9%は人工呼吸器が必要だった。小児は7症例で、症状は軽く、合併症は起こらなかった。
著者たちが突き止めた入院のリスク因子には、血液がんの診断、白人以外の人種、副腎皮質ホルモンの使用、免疫チェックポイント阻害療法などがあり、重篤な呼吸器症状のリスク因子がこれに似ていたが、全く同じではなかった。免疫チェックポイント阻害療法は、重篤な呼吸器症状の独立した予測因子だった。また、転移性病変、最近受けた化学療法、過去30日間に受けた大手術は、入院あるいは重度の呼吸器症状との有意な関連はなかった。
この研究で査定された12%という致命率は、がん患者でのCOVID-19に関するすでに公表された研究での推定値よりも低い。さまざまながんやがん治療法のもとでCOVID-19がもたらすリスクを明らかにするには、もっと患者数を増やした集団での研究が必要であると、著者たちは注意を促している。
doi:10.1038/s41591-020-0979-0
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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