エネルギー:米国の燃料需要がCOVID-19に関連する落ち込みから回復する時期を予測する新たなモデル
Nature Energy
2020年7月17日
米国のガソリン需要は、COVID-19に関連するロックダウンの結果として4月に急落して以降ゆっくりと拡大しているが、2020年10月より前には完全に回復しない可能性があることを示したモデル研究について報告する論文が、Nature Energyに掲載される。
米国は、世界最大のエネルギー消費国の1つであるとともに世界最大の産油国の1つで、世界全体で報告されているCOVID-19感染者の25%を占めており、移動を減らして「曲線を平らにする」公衆衛生政策によって、石油消費が落ち込んでいる。以前の研究では、パンデミックのピークを過ぎても、2024年までは感染者が再び増える可能性があることが示唆されており、感染の拡大を制御するロックダウン対策が延長されることになるかもしれない。従って、米国の経済状態の重要な先行指標である石油需要を確実に予測できるモデルが、経済活動と投資判断の管理に必要である。
今回S OuとX Heたちは、米国の中期的なガソリン需要を予測するとともに、ロックダウンや渡航禁止令などの政府の介入の影響を調べる機械学習モデルを設計した。このモデルには、パンデミックのさまざまな予測と、その結果生じる人々の旅行活動と燃料使用量が組み込まれている。
著者たちは、現在の感染データを用いて、米国のガソリン需要は5月に急速に立ち直った後ゆっくりと成長するが、2020年10月より前に完全に回復する可能性は低いことを見いだした。悲観的な感染シナリオの下では、継続的なロックダウンは、自動車用ガソリンの需要を一時的に減少させる可能性があるが、感染率を低下させることができるので、ガソリン需要をより速く通常の水準に戻すのに役立つ可能性もある。6月中旬から8月にかけての感染の第二波は、ガソリン需要を再び大幅に低下させる可能性があるが、4月の時よりも深刻にはならないと思われる。楽観的な感染シナリオの下では、ガソリン需要は、2020年9月下旬までにパンデミックが起こらなかった場合に近い水準に回復する可能性がある。こうした知見は、ロックダウン対策が感染率に影響を及ぼし、ひいては移動と燃料需要に影響を与えることを示す新たな証拠である。
著者たちは、このモデルを適切に修正すれば、他の輸送関連の燃料需要(貨物輸送トラック用など)を予測できるとともに、近い将来における諸外国の燃料需要の変化も予測できると指摘している。このモデルは、パンデミックの進展に伴って定期的に更新される。その結果は、https://covid19-mobility.comとhttps://teem.ornl.gov/poda.shtmlで見ることができる。
doi:10.1038/s41560-020-0662-1
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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