Research Press Release

疫学:COVID-19によってマラリアの予防活動が中断されれば、2020年のマラリアによる死者の数は倍増するだろう

Nature Medicine

2020年8月7日

サハラ以南のアフリカにおける2020年のマラリア関連死亡者数は、COVID-19のためにマラリア予防活動が妨げられれば、2019年の2倍以上に達する可能性があることが、Nature Medicine に掲載されたモデル化研究で示唆された。

マラリアによる疾病負荷はサハラ以南のアフリカに集中しているが、ここではCOVID-19の症例も増加中である。この地域の国々は、COVID-19パンデミックへの対応策として、病因であるSARS-CoV-2ウイルスの伝播を遅らせようと、医薬品に頼らない対策を施行している。一方、サハラ以南のアフリカでのマラリア制圧には、長期残効性の防虫剤で処理した蚊帳の配布が大きな役割を果たしてきており、2020年には多くの国で蚊帳配布活動が計画されていた。だが、このような活動がCOVID-19に関連して中止された場合、マラリアの疾病負荷にどのような影響が出るのかは分かっていない。

T Churcherたちは、COVID-19エピデミックの推移について4種類のシナリオを想定し、COVID-19の伝播モデルとマラリアの伝播モデルを使って、マラリア予防対策の中止などの最も重要な医療サービスの崩壊がもたらす影響を予測した。その結果、もしマラリア予防対策が完全にストップしたとすると、2020年のマラリアによる疾病負荷は2019年の2倍以上になりかねないことが分かった。ナイジェリアだけでも、6か月にわたってマラリアの症例管理が滞り、蚊帳の配布が遅れると、余剰死亡が平均8万1000人に上ると予測された。

著者たちは、こういった悪影響に対処することは可能だと述べており、マラリア予防活動、特に蚊帳の配布は、抗マラリア薬へのアクセスと共に最優先とすべきであり、これに加えてSARS-CoV-2の伝播を防ぐためにソーシャルディスタンシングの確保などの医薬品を使わない対策を実施していくことを推奨している。

doi:10.1038/s41591-020-1025-y

「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。

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