医学研究:乳児へのSARS-CoV-2伝播経路の系統的再評価
Nature Communications
2020年10月15日
すでに公表されているSARS-CoV-2の新生児感染症例(176例)の解析が行われ、その大部分はSARS-CoV-2への環境曝露が原因であることが明らかになった。ただし、この研究知見は、報告例の30%が母体からウイルスを獲得した症例だったことも示唆している。今回の研究について報告する論文が、Nature Communications に掲載される。
今回、Daniele De Lucaらの研究チームは、公表されたSARS-CoV-2の新生児感染症例(生後30日以内)のメタ解析を実施した。この解析では、鼻咽頭スワブ検査が陽性だったこと、血液中に特異抗体が検出されたことの一方または両方が満たされれば、SARS-CoV-2への感染が認定された。2020年8月30日までに報告された計176例の解析が行われ、その70%が環境曝露によるものであったことが判明した。また、全症例の30%は垂直伝播(母親から新生児へのウイルス伝播)を原因とし、全症例の約9%は出産前または出産時に感染を獲得した垂直伝播が原因であることが確認された。
今回の症例解析の対象となった乳児の55%(97人)は、後にCOVID-19を発症しており、De Lucaらは、その臨床症状が、呼吸器症状(発症例の52%)、発熱(44%)、消化管症状(36%)、神経症状(18%)など、高齢の患者で報告されているものと類似していると指摘している。
また、De Lucaたちは、出産後72時間以上経過してから発生した感染例を調べ、症例解析の対象となった乳児の中で、入院中に母親の隣でベビーベッドにいた(母子同室の)乳児は、SARS-CoV-2感染症の発生率が高くなると考えられることを明らかにした。そして、De Lucaたちは、母子同室を実施する場合には、適切な衛生対策を実施し、保護具を用意することで環境曝露による感染のリスクを減らすようにすべきだと主張している。
さらに、De Lucaたちは、母乳保育がSARS-CoV-2感染と関連しておらず、母乳を介したウイルス感染は、たとえあったとしてもまれであることを指摘している。しかし、この点を確かめるためには、さらなる研究が必要である。
doi:10.1038/s41467-020-18982-9
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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