Research Press Release

感染症:大量のCOVID-19検査に伴うコストの削減

Nature

2020年10月21日

少ない数の検査で、大規模な集団のSARS-CoV-2感染スクリーニングを行う数学的手法について記述した論文が、Nature に掲載される。この方法は、臨床現場で症例を確認する場面よりも大規模な感染モニタリングに適しており、特に、大量検査を実施するための予算を計上できない低所得国にとって有益と考えられる。

SARS-CoV-2の感染者を迅速に特定して隔離することは、このウイルスの感染拡大を抑制する重要な戦略だ。ウイルスRNAを検出できるPCR検査は非常に正確だが、検査1回当たりの費用が約30~50米ドル(約3300~5500円)で、特に低所得国で支出することが難しい。

検体を混ぜ合わせて(プールして)一度に検査を行うと、分析の効率が高まり、コストを削減できる。この方法は、対象集団における有病率が低く、大部分の検体の検査結果が陰性になるような疾患の場合に特に効果的だ。標準的なグループテスト手順では、検査前に検体を一定サイズのグループにまとめられる。グループテストで陽性と判定された場合には、グループ内の検体を個別に調べることで陽性者が特定される。

今回、Wilfred Ndifon、Neil Turokらの研究グループは、プール検査方式によるPCR検査を並行実施することによってSARS-CoV-2感染スクリーニングを最適化するための数学的アルゴリズムを発表した。この手法の基本は、1つの検体のグループを複数のサブ検体に分割し、それらが超立方体を構成するように組み替える点にある。もし検体のグループの中にSARS-CoV-2陽性の検体が1つ含まれている場合には、陽性のプール検体に対応する超立方体上の座標から陽性検体が直ちに特定されるのだ。もし特定できなければ、このアルゴリズムを使用してサブ検体を再配置し、もう一度テストが実施される。サブ検体のサイズは最適化することができ、有病率が低くなれば、サイズを大きくすることで、通常は陽性検体を2回のテストで特定できるようになっている。

この手法では、検体グループ内でサブ検体が混ぜ合わされた場合でも希釈検体中のSARS-CoV-2を必ず効率的に検出できる。Ndifonらは、ルワンダでのCOVID-19サーベイランスの際に採取された検体を用いて、1点の陽性の検体と99点の陰性の検体を混ぜ合わせた場合でもSARS-CoV-2の検出が可能なことを実証し、このアルゴリズムによって、感染者の早期特定にかかる費用が、個別のPCR検査の20分の1になる可能性があると結論付けている。

doi:10.1038/s41586-020-2885-5

「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。

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