トランプ支持者の多い地域では、COVID-19パンデミック中に人々が物理的距離を取らない傾向にあり、健康の転帰を予測できる
Nature Human Behaviour
2020年11月2日
2016年の大統領選挙でドナルド・トランプ(共和党)に投票した米国の郡部の住民は、ヒラリー・クリントン(民主党)に投票した郡部の住民よりも、2020年3月から5月にかけて、物理的な距離を取る傾向が14%小さかったことが分かった。Nature Human Behaviour に発表されたこの研究では、1500万人の日々の位置情報を追跡したデータが解析され、物理的な距離を取る傾向の党派による違いが、トランプ支持地域では、高いCOVID-19感染上昇率と相関していることが明らかとなった。
COVID-19パンデミック(世界的大流行)中の米国では、予防的な健康行動に対する認識および支持には、支持政党による違いが見られることが、複数の世論調査から明らかになっている。しかし、そうした調査が、現実世界における行動を反映しているか否かは不明であった。
Anton Gollwitzerたちの研究グループは、米国の3000の郡における1500万人のスマートフォン上の日々の位置情報データを解析して、パンデミックの最初の数か月間における人々の物理的距離を取る傾向が、支持する政党によって異なるかどうかについて調べた。Gollwitzerたちは、GPS座標を使って、一般的な移動の減少と、不急のサービス(レストラン、美容室、衣料品店など)のための外出の減少という観点から、物理的距離を測定して前年と比較した。
その結果、2016年にクリントンに投票した郡では日常活動に38%の減少が見られたのに対し、トランプに投票した郡の住民は24%の減少にとどまっていた。また、支持政党は、郡の平均収入、COVID-19症例数、通勤時間、人口密度、人種および年齢の動態などの他の因子よりも、物理的な距離を取ることとの相関が強いことも判明した。さらに、党派間の差は、自宅待機指示が講じられている場合でも経時的に大きくなった。またGollwitzerたちは、数理モデルを組み合わせることで、物理的距離に見られる党派間の差は、後の感染件数および死亡件数の上昇率と関連していることを見いだした。使用されたモデルによれば、トランプ支持派の郡における物理的距離を取る傾向の減少が、その後の1日当たりの感染率の上昇率が平均よりも高くなることと相関していた。
研究グループは、得られたデータは相関性を示しているものであり、米国における党派性が異なる物理的距離の取り方のパターンを引き起こしたことを示しているものではないと注意を促している。しかしながら、党派性は、現在のCOVID-19パンデミックの、そしておそらくは他の公衆衛生上の危機にとって重要な危険因子である可能性があると結論付けている。
doi:10.1038/s41562-020-00977-7
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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