Research Press Release

免疫学:回復期患者におけるSARS-CoV-2の交差中和抗体応答

Nature Microbiology

2020年11月16日

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の回復期にある患者は、回復後もロバストな中和抗体応答を維持するが、一部の症例では、この抗体応答には他のコロナウイルスを中和する抗体が関わっていることを明らかにした論文が、Nature Microbiology に掲載される。この症例研究は、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)に対する免疫応答への理解を深め、COVID-19の治療やワクチンの開発にも意味を持つ。

中和抗体は、B細胞とよばれる白血球によって作られ、侵入してくる病原体の生物活性を中和することによって、体を病原体から守るのに役立っている。しかし、SARS-CoV-2感染に応答して作られる中和抗体についてはほとんど何も分かっていない。

今回Xiaowang Quたちは、中国湖南省において、COVID-19の回復期にある患者67人の血清を分析し、大半の患者では退院の1か月後も中和抗体レベルが維持されていて、一部の血清は、SARS-CoV、MERS-CoVと交差反応して中和することを発見した。重症のCOVID-19から回復した患者の方が、より強い中和抗体応答が認められた。この応答は、B細胞の抗体産生を助ける濾胞性ヘルパーT(TFH)細胞と呼ばれる免疫細胞の血中循環量と関連していて、重症に至らずにCOVID-19から回復した患者に比べて、重症のCOVID-19から回復した患者の血中でより多く見られた。

Xiaowang Quたちは、中和抗体応答の開始あるいは維持にTFH細胞が何らかの役割を果たしている可能性があると述べている。また、SARS-CoV-2の中和抗体に他のコロナウイルスへの交差反応性があることから考えると、複数のコロナウイルスに対して効果を示す汎コロナウイルスワクチンが設計できる可能性がある。

doi:10.1038/s41564-020-00824-5

「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。

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