代謝:SARS-CoV-2感染とコレステロールの関係が、COVID-19の治療法のヒントになる
Nature Metabolism
2020年11月26日
重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)は、細胞への感染を容易にするためにコレステロールに関わる細胞内機構を使っている可能性があることを示した報告がNature Metabolism に掲載される。この知見は、糖尿病や心臓血管病のような代謝疾患を持っていると、なぜCOVID-19の罹患率と死亡率が高いかを説明するのに役立つ可能性があるとともに、COVID-19の治療介入の新しい標的を見つける手掛かりになる。
SARS-CoV-2感染では、ウイルス表面のスパイクタンパク質が、宿主細胞のアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)と呼ばれる受容体に結合する。今回Hui Zhongたちは細胞培養研究を行い、HDLスカベンジャー受容体B1型(SR-B1)と呼ばれる別の受容体の役割をあぶり出した。この受容体は肺細胞をはじめとするヒトのいくつかの組織で発現され、通常は高密度リポタンパク質(HDL;「善玉コレステロール」とも言われる)に結合する。しかし今回の研究では、ウイルスのスパイクタンパク質がコレステロールに結合し、さらにSR-B1の発現とHDLの存在が合わさると、ウイルスがACE2を発現する細胞に結合して侵入するのを助けていたことが分かった。
つまりウイルスは、宿主細胞へ侵入しやすいように、細胞のコレステロール取り込み機構を乗っ取っるらしい。著者たちが、SR-B1に対するモノクローナル抗体や特異的な薬理学的アンタゴニストを使ってこの経路を阻害したところ、HDLを介したウイルス感染の増強は起こらなくなった。著者たちは、この研究によってCOVID-19とコレステロールの分子レベルの潜在的な結び付きが明らかになったと結論付けており、SR-B1を標的とする薬剤がSARS-CoV-2感染を抑制するのに役立つ可能性があると述べている。
doi:10.1038/s42255-020-00324-0
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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