Research Press Release

ウイルス学:インフルエンザ薬を転用して、フェレットでのSARS-CoV-2の伝播を阻害する

Nature Microbiology

2020年12月3日

フェレットにおいて、リパーパシングされたインフルエンザ薬が、上気道の重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)量を減少させてウイルス伝播を抑制できることを示唆する報告がNature Microbiology に掲載される。これらの知見は、現在COVID-19の治療薬として第II/III相臨床試験が行われているMK-4482/EIDD-2801が、SARS-CoV-2の市中感染を抑えるために使用できる可能性を示している。

レムデシビルや回復期患者の血清といった現在のCOVID-19治療法は、経口投与ができないため、市中感染の制御には適していない。MK-4482/EIDD-2801は経口投与が可能であり、インフルエンザの伝播を防ぐことが、モルモットモデルで明らかになっている。フェレットは、SARS-CoV-2を効率よく伝播するが発現する臨床症状は最小限であり、これは若い成人感染者の場合とよく似ているため、SARS-CoV-2の研究に適した良いモデルである。

今回、Richard Plemperたちは、フェレット3匹ずつを4組にしてSARS-CoV-2を感染させた。そしてこれらのフェレットに、感染の12時間後から体重1 kg当たり5 mg、または15 mgのMK-4482/EIDD-2801を1日2回、あるいは感染の36時間後から体重1 kg当たり15 mgのMK-4482/EIDD-2801を1日2回投与した。MK-4482/EIDD-2801を投与したフェレットでは上気道のSARS-CoV-2量が大幅に減少したのに対し、対照群では感染から3.5日後でも鼻甲介(空気の通り道)にウイルスが検出され、研究終了時まで感染が持続した。SARS-CoV-2のRNAは全てのフェレットの鼻腔組織から検出されたが、MK-4482/EIDD-2801投与群ではRNA量が有意に減少していた。

また著者たちは、MK-4482/EIDD-2801がSARS-CoV-2の伝播を抑制できるかについても検証した。3匹のフェレット2組にSARS-CoV-2を感染させ、1組には感染12時間後にMK-4482/EIDD-2801を投与した。感染から30時間後に、感染フェレットを1匹ずつにして、それぞれSARS-CoV-2未感染の2匹のフェレットと3日間一緒に飼育した。3日後、MK-4482/EIDD-2801を投与したフェレットと一緒に収容していた未感染フェレットからは、鼻腔組織も含め感染性のSARS-CoV-2粒子は検出されなかった。対照的に、MK-4482/EIDD-2801を投与しなかったフェレットと一緒に飼育した未感染フェレット全てに、SARS-CoV-2が広がっていた。これらのフェレットは24時間後に感染性のウイルス粒子を産生し始め、研究終了時には感染性のピークに到達しようとしていた。

ただし著者たちは、MK-4482/EIDD-2801の抗ウイルス作用はヒトではまだ明らかになっていないと注意を促している。しかし、今回の知見は、MK-4482/EIDD-2801にSARS-CoV-2の伝播を阻止する効果がある可能性を示している。

doi:10.1038/s41564-020-00835-2

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