免疫学:BNT162b2ワクチンはSARS-CoV-2の3種類の変異株を中和できる
Nature Medicine
2021年2月8日
ファイザー社とビオンテック社が共同開発した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンBNT162b2が、N501Y変異やE484K変異を持つ重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)を中和することが、このワクチンの接種を受けた20人の血清を調べた研究で明らかになった。この結果はNature Medicine に掲載される。
英国で見つかったSARS-CoV-2変異株と南アフリカで見つかった変異株は共に、同じN501Y変異を持っている。また、やはり南アフリカで見つかったこれらとは別の変異株は、E484K変異を持っている。これらの変異はウイルスのスパイクタンパク質中に存在し、ACE2受容体(SARS-CoV-2が結合することが知られている)に対するスパイクタンパク質の親和性を高めると考えられている。N501Y変異はまた、ウイルスが感染できる宿主の範囲をマウスにまで広げるらしい。SARS-CoV-2に対して今回開発されたワクチンが、これらの変異株に対しても防御効果を示すかどうかは、緊急に解明すべき課題である。
P Shi、P Dormitzerたちは、感染が広がっているこれらの変異株に見られる変異を組み合わせて持つウイルスを作製し、以前に実施されたBNT162b2ワクチン臨床試験の参加者20名から得たヒト血清(BNT162b2ワクチンを3週間の間隔を開けて2回接種し、接種の2週間後あるいは4週間後に採取)について効力を検証した。それぞれの血清について、SARS-CoV-2の非変異株だけでなく、変異株も中和できるかどうか調べたところ、これらの血清によって変異株ウイルスが中和されることを示す証拠が得られた。ただし効果にはわずかな違いがあり、E484K変異に対する中和作用は、N501Y変異に対する場合より若干低いことが分かった。
著者たちは、SARS-CoV-2の進化は現在も進行中であり、新たに出現する変異株に対するワクチンの効果は継続的に監視していく必要があると述べている。
doi:10.1038/s41591-021-01270-4
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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