免疫学:mRNAワクチンの有効性は一部のSARS-CoV-2変異株に対してわずかに低くなっている
Nature
2021年2月10日
重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)に対するmRNAワクチン(モデルナ社製とファイザー社/ビオンテック社製)の中和活性が、N501Y変異株(英国と南アフリカで流行している変異株)、E484K変異株とK417N:E484K:N501Y混合変異株の場合にわずかに低くなっていることが明らかになった。この知見は、20人の感染者を対象とした研究に基づいたものであり、これら2社のワクチンを定期的に更新して臨床的有効性が低下する可能性を回避する必要が生じるかもしれないことが示唆された。以上の研究結果を報告する論文が、Nature に掲載される。
今回、Michel Nussenzweigたちは、mRNAワクチンの2回接種を完了した20人から血液サンプルを採取して、mRNAワクチン接種に対する抗体と記憶B細胞の応答を調べた。20人が接種したワクチンは、モデルナ社のmRNA-1273(14人)とファイザー社/ビオンテック社のBNT162b2(6人)だった。これらの抗体と記憶B細胞は、SARS-CoV-2感染後に体内に残って、急速に増殖し、再感染時にSARS-CoV-2に対する抗体を産生する。今回の研究で分かったのは、ワクチン接種によって中和抗体が産生され、この中和抗体が、SARS-CoV-2受容体結合ドメインのエピトープを標的としていたことだ。このエピトープは、自然感染後に産生される抗体が標的とするものと同じだった。また、Nussenzweigらは、2種類のmRNAワクチンで免疫された者の体内に極めて類似した近縁の抗体が産生されたという観察結果を示した。
次にNussenzweigたちは、ワクチン接種を受けた者の血漿によって、流行しているSARS-CoV-2の変異株を中和できるかどうかを突き止めるため、SARS-CoV-2スパイクタンパク質の10種の変異体のいずれかを発現するように改変されたレトロウイルスを使って、血漿サンプルの検査を実施した。これら10種の中には、受容体結合ドメイン変異(RBD変異)N501Y、E484K、K417Nとこれら3つが組み合わさったものなどが含まれていた。その結果、E484K変異株、N501Y変異株、K417N:E484K:N501Y混合変異株に対する中和活性が1~3分の1まで低下していたことが分かった。検査対象になった最も強力なモノクローナル抗体17種のうち14種は、N501Y変異株、E484K変異株とK417N変異株に対する中和活性が低くなっていた。
Nussenzweigたちは、受容体結合ドメイン上に確認されていないエピトープに対する中和抗体が2種のmRNAワクチンによって誘導されるのかどうかは明らかになっていない、と指摘し、ウイルスの進化を補完するためにワクチンを更新し、免疫を監視する必要があるかもしれないと結論付けている。
doi:10.1038/s41586-021-03324-6
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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