免疫学:新しい変異株は抗体による中和に抵抗性を示す
Nature Medicine
2021年3月4日
重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)の比較的新しい変異株の一部が中和抗体の作用に抵抗性を示すことが、実験により明らかになった。Nature Medicine に掲載されるこの結果は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンの設計や抗体療法の使用に影響を及ぼす可能性がある。
ウイルスが宿主細胞に侵入するのを妨げる中和抗体は、ウイルス感染やワクチン接種への応答として体内で産生され、長期的な免疫の形成を助けるので重要である。しかし、SARS-CoV-2に対する抗体が、新しい変異株も中和できるかどうかは分かっていない。
M Diamond、P Shi、A Ellebedyたちは、英国型変異株(B.1.1.7)のような比較的最近になって見つかったいくつかのSARS-CoV-2変異株、またSARS-CoV-2ワシントン株(Wash SA-B.1.351)のような、南アフリカ型変異株(B.1.351)やブラジル型変異株(B.1.1.248)のスパイクタンパク質を持つように遺伝子操作したキメラウイルスについて、抗体がこれらを中和できるかどうかを評価した。
著者たちは、モノクローナル抗体に加えて、COVID-19感染後の回復期患者やファイザー・ビオンテック社製のワクチン接種を受けた人たちから得た血清検体(中和抗体を含む)を集め、一連のSARS-CoV-2自然発生変異株と実験室で作られた合成変異株に対する中和活性を調べた。ほとんどの検体で、B.1.351スパイクタンパク質を持つウイルス株、あるいは484位と501位に変異を持つ他のSARS-CoV-2ウイルス株に対しては阻害活性が低下していた。この結果は、現在の中和抗体は、南アフリカ型変異株や484位と501位の両方に変異を持つウイルス株に対して、効果が低い可能性を示唆している。
今回の研究結果は、COVID-19の治療に影響するかもしれない。COVID-19パンデミックの初期に感染した患者由来の血漿では、一部の新規変異株に感染した患者を守れない恐れがあるからだ。既存の治療用抗体カクテルの中には調整が必要なものが出てくる可能性があり、ワクチンの塩基配列についても同様なことが言える。だが著者たちは、今回の知見を裏付けるには患者での実証的研究が必要だと述べている。
doi:10.1038/s41591-021-01294-w
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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