免疫学:SARS-CoV-2のB.1.351変異株に対する中和抗体の効果は非常に低い可能性がある
Nature Medicine
2021年3月26日
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の回復期にある患者やワクチン接種を受けた人に由来する抗体は、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)のB.1.1.7変異株(英国で最初に見つかった変異株)は中和できるが、B.1.351変異株(南アフリカで最初に見つかった変異株)に対しては、参照用のD614G株と比較した場合、中和できないか、もしくは中和効率が低い可能性があることが分かった。研究室での実験に基づくこの結果が、Nature Medicine に掲載される。この知見は、ワクチン接種完了者や感染から回復した患者では、B.1.1.7変異株に対しては抗体による防御がある程度働くものの、B.1.351変異株への感染リスクには抗体の影響がないことを示している。ただし、ワクチンを2回接種すると、これらの変異株に対する中和抗体応答は増強される。
SARS-CoV-2の新しい変異株は、B.1.351変異株やB.1.1.7変異株を含め、さまざまな国に広がっており、これらに対してワクチンが有効なのかどうか、懸念が高まっている。
O Schwartzたちは、感染性を持つB.1.1.7変異株とB.1.351変異株を感染者から単離し、抗体に対するこれらの変異株の応答を調べた。抗体は、ファイザー社ワクチンの初回接種から6週間以内の19人と、これらの変異株より前に出現したウイルス株への感染・発症後9か月以内のワクチン未接種者58人から採取された。
回復患者由来の抗体は、B.1.1.7変異株を中和できるが、B.1.351変異株に対する効果はこれよりずっと低いことが分かった。中和活性は6分の1に低下し、南アフリカ型変異株に対しては、検体の40%が全く中和活性を示さなかった。ワクチン接種完了者由来の抗体も同様に、B.1.1.7変異株は中和できたが、B.1.351変異株に対する効果は低かった。2回目のワクチン接種後に中和活性は上昇したが、それでもB.1.351変異株に対する活性は、参照用のD614G株の場合に比べると14分の1にすぎなかった。
この研究は、実験室で作られた代理株ではなく、患者由来の真正なウイルス株を使っているという点で、非常に価値がある。著者たちは、これらの知見はさらに研究を進めるための根拠にはなるが、抗体は免疫系のウイルス感染に対する応答の一部にすぎないと述べている。感染細胞を攻撃するT細胞の活性など、免疫系の他の要素が、このような感染力の高い変異株に対してもっと高い交差反応性を持つこともあるかもしれない。
doi:10.1038/s41591-021-01318-5
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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