環境:今後の気候変動に対して脆弱なEUの輸入農産物
Nature Communications
2021年6月16日
欧州連合(EU)が将来的に輸入するコーヒー、ココア、ダイズなどの農産物の44%以上は、気候変動の結果として、2050年までに干ばつに対して非常に脆弱になる可能性のあることを示唆する論文が、Nature Communications に掲載される。この知見は、気候変動に対する輸入農産物の脆弱性が増大していることを浮き彫りにしている。
気候変動に対する農業部門の脆弱性に関して懸念が高まっている。変化する気候に適応するためには、どの作物が干ばつなどの問題に最も脆弱で、現在の気候条件と比較して将来どのように脆弱性が変化するのかを理解する必要がある。
Ertug Ercinたちの研究チームは、温室効果ガス排出量が中程度のシナリオ(RCP 6.0)と少ないシナリオ(RCP 2.6)の下で、2030年、2050年、2085年のEUの農業・食料経済の越境的気候脆弱性を非EU諸国における干ばつの深刻度との関係で定量化し、マッピングした。Ercinたちは、RCP 6.0シナリオの下では、2050年に、EUの輸入農産物の44%以上が干ばつに対して非常に脆弱になり、輸入農産物の生産地における干ばつの深刻度が、現在のレベルより35%高くなるという見解を示している。Ercinたちは、気候脆弱性の最も大きいEUの輸入作物として、コーヒー、ココア、サトウキビ、アブラヤシ、ダイズを挙げており、今後、多くの主要輸入作物が、干ばつリスクの高い地域(ブラジル、インドネシア、インドなど)から輸入されると予測している。
今回の知見は、世界の農業部門における輸出入が相互に関連し合っていることを明確に示しており、国際貿易における気候適応の重要性を指摘している。
doi:10.1038/s41467-021-23584-0
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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