Research Press Release

気候変動:都市部における屋外および車両火災のリスクの増加

Nature Cities

2025年3月4日

気候変動の影響により都市で発生する一部の火災の頻度は、今後数十年で増加することが予測されるモデリング研究を報告する論文が、Nature Cities に掲載される。この研究結果は、20か国2,847都市のデータに基づいており、今後の都市計画や緊急対応戦略に役立つかもしれない。

世界中で発生する火災により、毎年5万人が死亡し、17万人が負傷していると推定されている。しかし、火災は、山火事など他の火災の種類よりも多くの人的被害や経済的損失を引き起こすことが多いにもかかわらず、都市環境における火災の頻度については、今後の傾向が不明である。この理解の不足は、地域の消防資源管理や都市計画に悪影響を及ぼす可能性がある。

Long Shiらは、米国、英国、オーストラリア、および中国を含む20か国の2,847都市の都市消防局からデータを収集し、2011年から2020年までの都市レベルの火災事故に関する世界規模のデータベースを構築した。そして、気候温暖化に対応して、都市の建物、車両、および屋外エリア(埋立地など)の焼失を含む、さまざまな都市火災の発生頻度の変化を数値化した。この過去のデータセットを使用して、気候変動に関する政府間パネル(IPCC:Intergovernmental Panel on Climate Change)のさまざまな気候シナリオに基づき、地球温暖化がさまざまな都市火災の発生頻度に及ぼす可能性が高い影響を評価した。Shiらは、温室効果ガス排出量が多いシナリオ(SSP5–8.5;SSP:Shared Socio-Economic Pathway〔共通社会経済経路〕)では、2100年までに車両火災が11.6%、屋外火災が22.2%増加する可能性があるが、建物火災は4.6%減少する可能性があると予測した。また、この研究では、2020年から2100年の間に、地球温暖化が原因で、調査対象のすべての都市で、火災関連の死亡者数が33万5,000人、そして、火災関連の負傷者数が110万人に達すると推定している。

著者らは、この調査結果は、火災の燃料管理の改善など、火災対策の新たな戦略を開発するための基礎となるかもしれないと主張している。しかし、著者らは、この分析にはアフリカと南米のデータが含まれていないこと、また、車両火災に関する調査結果は、最近の電気自動車へのシフトを反映していない可能性があることを指摘している。

  • Article
  • Published: 03 March 2025

Shi, L., Wang, J., Li, G. et al. Increasing fire risks in cities worldwide under warming climate. Nat Cities (2025). https://doi.org/10.1038/s44284-025-00204-2
 

doi:10.1038/s44284-025-00204-2

「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。

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