気候変動:北極域の降雨量が以前の想定よりも急速に増えるという予測
Nature Communications
2021年12月1日
このほど実施されたモデル化研究から、北極域の降雨量が、これまで考えられていたよりも速いペースで増加するという予測が明らかになった。この知見を報告する論文が、Nature Communications に掲載される。今回の研究では、北極域の総降雨量が、これまで考えられていたより数十年も早く北極域の降雪量を上回り、気候、生態系、社会経済にさまざまな影響を及ぼす可能性のあることが示唆された。
北極域は、世界中の他のほとんどの地域より温暖化のペースが速いことが知られており、この地域内で環境の大きな変化が起こっている。北極域の降雨量が、21世紀のある時点で降雪量を上回ることを示唆する研究報告があるが、この移行がいつ起こるのかは明らかになっていない。
今回、Michelle McCrystallたちは、第6期結合モデル相互比較計画(CMIP6)の最新の予測を用いて、2100年までの北極域の水循環の変化を評価した。その結果、降水量(降雨量、降雪量など)が全ての季節で増加するという予測結果が得られた。北極域では、季節や地域にもよるが、降雨が主たる降水形態になる時期が、以前のモデルで示唆されていたよりも10~20年早くなると予測された。このことは、温暖化の激化と海氷減少の加速に関連している。例えば、以前のモデルでは、北極海中央部で降雨が主たる降水形態に移行するのが2090年と予測されていたが、最新モデルでは、この移行が2060/2070年になると予測されている。McCrystallたちは、この移行が起こる気温閾値が、以前のモデルの予測よりも低くなる可能性があり、グリーンランドなど一部の地域では気温上昇が1.5℃であっても移行が起こり得るという考えを示している。
McCrystallたちは、北極域で降雨が主たる降水形態になると、氷床の融解、河川、野生動物の個体群に影響を及ぼし、社会、生態系、文化、経済にとって重要な意味を有するため、気候変動緩和政策の厳格化が必要だと主張している。
doi:10.1038/s41467-021-27031-y
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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