加齢:アルツハイマー病の治療薬候補としてのシルデナフィル
Nature Aging
2021年12月7日
肺高血圧症と勃起不全の治療薬として用いられている薬剤であるシルデナフィルの処方が、アルツハイマー病の発症リスクの大幅な低下と関連していることを報告する論文が、Nature Aging に掲載される。今回の知見は、シルデナフィルのリパーパシングが、アルツハイマー病の治療選択肢となる可能性を示唆している。
アルツハイマー病(AD)は、加齢に関連した認知症の最も一般的な形態で、全世界に数千万人の患者がいる。現在のところ、ADの有効な治療法はなく、そのため、人口の高齢化に伴って社会の経済的負担と疾患負荷が増している。
今回、Feixiong Chengたちは、コンピューターを用いた方法によって、遺伝的データとその他の生物学的データを統合し、ADの生物学的特徴を捉えた13の疾患「エンドフェノタイプモジュール」を構築した。これらのモジュールは、35万1444のヒトタンパク質間相互作用からなる大型ネットワーク上にマッピングされた。そして、1600以上のFDA承認薬について、ネットワーク近接性スコアが生成された。このスコアが高い薬剤は、AD関連モジュール内の複数の分子標的と物理的に相互作用することを意味している。シルデナフィルのスコアは、上位グループに入っており、ADに影響を及ぼす可能性のあることが示唆された。この点を検証するため、Chengたちは、米国の700万人以上の保険金請求データを分析したところ、シルデナフィルの処方は、6年間の追跡調査後にADの診断リスクが69%低下したことと有意に関連していたことが明らかになった。この関連の判断においては、影響を及ぼし得る要因(性別、人種、年齢など)の補正が行われたが、シルデナフィルは主に男性の勃起不全の治療に使用されるため、性別が特に重要だ。
Chengたちは、今回の研究デザインでは、特定の薬剤の使用とADのリスクの間の因果関係を実証できない点に注意を喚起している。そのため、この状況におけるシルデナフィルの有効性を判定するためには、男女両方の被験者を対象とした無作為化プラセボ対照臨床試験を実施する必要がある。
doi:10.1038/s43587-021-00138-z
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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