COVID-19:複数世帯が集まることを禁じるイングランドの措置はロックダウンのたびに守られなくなった
Scientific Reports
2021年11月25日
イングランドでは、最初のロックダウンで複数世帯の人々が集まる行動が著しく減り、2度目のロックダウンでも比較的少なかったが、3度目のロックダウンでは増えていたことを報告する論文が、Scientific Reports で発表される。この論文には、3度目のロックダウンの際に複数世帯の人々が集まる行動が増えた2021年2月中旬が、イングランド全土で重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)ワクチン接種が拡大した時期と一致していたという観察結果が示されている。
今回の研究で、Ed Manleyたちは、データが研究目的で使用されることに同意した100万人以上の匿名ユーザーの携帯電話データを使用した。このデータは、EU一般データ保護規則(GDPR)に準拠している。Manleyたちは、イングランドでのパンデミック発生の8週間前の世帯訪問数の平均値から算出したベースライン値とパンデミック期間中の世帯訪問数を比較した。その結果、最初のロックダウン(2020年3月~)の際に複数世帯の人々が集まる行動が最も大きく減少した(54.4%減)が、禁止措置が解除されると、年末まで徐々に増加していったことが判明した。また、2度目のロックダウン(2020年11月~)の減少幅と3度目のロックダウンの最初の月(2021年1月)の減少幅は、それぞれ15.28%と26.22%だった。複数世帯の人々が集まる行動には地域差があり、一部の都市域(ロンドン、マンチェスター、ケンブリッジなど)では増加していた。
3度目のロックダウンの際には、英国内の禁止措置が続いていたにもかかわらず、2021年2月中旬に複数世帯の人々が集まる行動が著しく増加し、ロックダウン期間中はベースライン値を1.4~23.3%上回った。この行動の増加は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響を最も受けやすい人々の大部分がワクチン接種を受けたことが発表され、イングランド全土にワクチン接種プログラムが拡大した時期と重なっていた。Manleyたちは、この著しい増加について、ワクチン接種によって安全が達成されたことが幅広く認知されたことの反映である可能性があるという見解を示すとともに、ロックダウンが繰り返し実施されると、複数世帯の人々が集まる行動が増えた原因の1つが「ロックダウン疲れ」だったという考えを明らかにしている。
Manleyたちは、今回の携帯電話のデータに関する研究が、プライバシー保護に配慮しつつ、地域規模と国内規模でCOVID-19の公衆衛生政策の有効性を評価するために役立つ有益なツールとなる可能性があると結論付けている。ただし、今回の研究で、今後の禁止措置や追加ワクチン接種と複数世帯の人々が集まる行動との関連に関する予測はなされなかった。
doi:10.1038/s41598-021-02092-7
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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