古生物学:行跡化石から分かった走る速度が最速クラスの恐竜
Scientific Reports
2021年12月10日
スペインのラ・リオハ州で発掘された足跡化石の解析が行われて、獣脚類種(二足歩行の捕食性恐竜)の一部は、走る速度が時速45キロメートルに達した可能性のあることが分かった。この知見について報告する論文が、今週、Scientific Reports に掲載される。今回の知見は、これまでに獣脚類の足跡化石から計算された最速クラスの走行速度を示している。
今回、Pablo Navarro-Lorbésたちは、白亜紀前期(1億4500万~1億50万年前)の2つの足跡群(La Torre 6A-14行跡とLa Torre 6B-1行跡)を解析した。La Torre 6A-14行跡には、5つの保存された足跡が含まれており、La Torre 6B-1行跡には、7つの足跡が含まれている。これらの足跡には3本の指が見られ、足幅よりも足長の方が長く、同じ獣脚類種が残したものである可能性が高かったが、種の特定はできなかった。Navarro-Lorbésたちは、この未知の恐竜種が中型の恐竜で、非常に機敏であり、スピノサウルス科恐竜かカルカロドントサウルス科恐竜であった可能性があるとする考えを示している。6A-14行跡の恐竜は、6B-1行跡の恐竜よりも大きかった。
Navarro-Lorbésたちは、足跡の角度と足跡間の距離に基づいて、6A-14行跡の獣脚類が時速23.4~37.1キロメートルで走り、6B-1行跡の獣脚類は時速31.7~44.6キロメートルでさらに速く走ったと計算した。これは、獣脚類の足跡から推定された速さのトップ3に入る。
6A-14行跡は、推定速度がスムーズかつ一貫して上昇していたことを示し、6B-1行跡は、著しい速度変化が突然起こったことを示していた。この点について、Navarro-Lorbésたちは、6B-1行跡の獣脚類が体の動きを調節しながら走っていたという見方を示している。今回の知見は、これらの恐竜がどのように動き、どのような条件下で走れたかを明らかにした。
doi:10.1038/s41598-021-02557-9
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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