気候変動:温室効果ガス排出国上位5か国が地域的な極端な高温現象を激化させる可能性
Communications Earth & Environment
2022年1月7日
このほど実施されたモデル化研究で、温室効果ガス排出量の上位5か国(中国、米国、欧州連合、インド、ロシア)の温室効果ガス排出のために2030年までに猛暑年の発生確率が高まるという予測が得られた。現在の気候変動緩和策に関する公約の下では、上位5か国の温室効果ガス排出によって猛暑年を1年おきに経験する国の数が、上位5か国の温室効果ガス排出量がゼロのシナリオと比較して、2倍になる可能性が浮上した。このモデル化研究について報告する論文が、Communications Earth & Environment に掲載される。
2021年11月に英国グラスゴーで開催されたCOP26に先立って、気候変動緩和に向けた最新の公約が発表されたが、これらの公約は、地球温暖化を産業革命前の水準から1.5°Cに抑えるという2015年のパリ協定の目標を達成できていない。COP 26で採択されたグラスゴー気候協定は、締約国に対し、2022年末までに公約を強化するよう求めている。しかし、気候変動を緩和したいという意欲が不足していることの影響の研究は、主に全球規模で行われており、国別の研究はあまり行われてこなかった。
今回、Lea Beuschたちの研究チームは、上位5か国の過去の温室効果ガス排出量データとCOP26以前の公約の両方を用いて、2030年までの国別の温暖化予測を導き出した。産業革命以前の気候で1世紀に1回程度しか起こらない猛暑年が、現在の公約の下では研究対象国(165か国)の92%で1年おきに起こるようになり、上位5か国の影響を受けない場合は46%にとどまるという予測が得られたのだ。この46%という予測は、1991年以降の上位5か国の温室効果ガス排出量を除外したシナリオに基づいている。1991年は、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が政策立案者に対して人為的気候変動を初めて報告した年だ。
以上の結果は、上位5か国の温室効果ガス排出量削減の意欲が、今後10年間の地域的な気候変動(例えば、極端な高温現象)の発生にとって重要なことをはっきりと示している。
doi:10.1038/s43247-021-00320-6
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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