気候変動:米国での年間の洪水被害額が2050年までに26%増加するという予測
Nature Climate Change
2022年2月1日
米国では、気候変動のために、年間の洪水被害額が2050年までに26.4%増加する可能性があり、低所得コミュニティーがそれを過大に負担することになると明らかにしたモデル化研究について報告する論文が、Nature Climate Change に掲載される。
洪水ハザードマップを作成することは、リスク管理において、気候変動対策の費用便益分析を実施したり、新たな開発事業の実現可能性を推定したりするために不可欠だ。しかし、規制目的や商業目的に用いられる典型的なモデルは、過去のデータに依存しており、予測される気候変動を捉えられていない。また、低分解能で非現実的なモデル化設定によって、モデル化の実用的な用途が限定的なものになっている。
今回、Oliver Wingたちは、高度なモデル化技術、土地家屋レベルの資産データ、気候予測を用いて、米国における洪水リスクについて、包括的で高分解能な将来を見据えた推定方法を開発した。Wingたちの推定によれば、現在の米国の洪水被害額は平均で年間321億ドル(約3兆5300億円)であり、2050年までに26.4%増の406億ドル(約4兆4700億円)になるとされる。現在、そのリスクを負っているのが、白人の比率が高い低所得コミュニティーであることが明らかになっている。しかし、今後の洪水リスクの増加で、大西洋とメキシコ湾の沿岸部のアフリカ系アメリカ人のコミュニティーがより大きな影響を受けると予測される。気候変動に加えて、予測される人口変動も、洪水リスクの大幅な増加を引き起こす可能性がある。
Wingたちは、今回の結果が、気候変動下で米国が直面している洪水リスクを示しており、このリスクへの適応とさらなる被害を食い止めるための気候変動緩和活動の必要性を強調していると結論付けている。
doi:10.1038/s41558-021-01265-6
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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