疫学:英国と米国におけるワクチン接種の人種・民族間格差の評価
Nature Communications
2022年2月1日
重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)ワクチンの導入初期に実施された調査を基にした研究で、ワクチン接種に不安を感じる、あるいはワクチン接種を希望していないと回答した少数民族と少数人種の人々が、白人の最大3倍に達していたことが示唆された。今回の研究は、英国と米国の調査参加者からスマートフォンアプリを介して収集された自己報告データに基づいており、米国でのワクチン接種における人種・民族間格差の根本原因の1つがワクチン接種を受ける機会の格差だったという可能性も示唆している。この研究について報告する論文が、Nature Communications に掲載される。
少数人種と少数民族の人々は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響を過大に受けており、COVID-19の感染、感染関連合併症、COVID-19関連死のリスクがそれぞれ高い。人種的にも民族的にも多様な集団が居住する英国と米国では、COVID-19ワクチン接種キャンペーンと医療提供に関して、さまざまな取り組みが行われている。両国では、ワクチン接種における人種・民族間格差が報告されているが、広範なコミュニティーで収集したサンプルによる具体的なデータが不足している。
今回、Andrew Chanたちの研究グループは、2020年12月〜2021年2月に、英国の125万4294人と米国の8万7388人から、ワクチン忌避とワクチン接種に関するデータをスマートフォンのアプリを使って収集した。その結果、ワクチン接種に不安を感じる、あるいはワクチン接種を希望していないと回答する英国と米国の少数人種と少数民族の参加者が、白人の参加者の最大3倍に達することが分かった。また、米国では、黒人の参加者が、ワクチン接種を受ける意思を示していても、ワクチン接種を受けたと回答する確率が、白人の参加者よりも低かった。この結果は、英国のコホートでは観察されず、Chanたちは、米国の集団接種キャンペーンの初期段階でワクチン接種を受ける機会が不足していたことが原因だったかもしれないという考えを示している。
Chanたちは、自発的に研究に参加した人々の自己報告情報に依存しており、回答の収集方法が報告バイアスにつながったかもしれないため、今回の研究に限界があることを認識している。しかし、今回の研究によって得られた知見は、医療の格差に取り組んで、健康の公平性と集団規模の免疫を達成する必要のあることを強調しているとChanたちは考えている。
doi:10.1038/s41467-022-28200-3
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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