免疫学:ワクチン接種とウイルス感染に誘導されたT細胞応答がオミクロン株に対しても維持されている
Nature
2022年2月1日
ワクチン接種やウイルス感染によって誘導されたSARS-CoV-2スパイクタンパク質に対するT細胞応答の大多数は、オミクロン変異株に対して維持されていることが、138人の参加者が関係する研究によって明らかになった。ただし、このように維持されているT細胞応答がCOVID-19の重症化に対する防御に寄与するかどうかは、現時点では不明だ。今回の研究について報告する論文が、Nature に掲載された。
オミクロン株のスパイクタンパク質には30以上の変異があり、この変異は、中和抗体応答をかなりの割合で回避する効果があることが以前に報告された。しかし、免疫応答の他の構成要素(例えばT細胞)が、どの程度オミクロン株を攻撃する能力を維持しているのかは明確になっていない。
今回、Catherine Riou、Wendy Burgersたちの研究グループは、既にワクチン接種を受けた人やSARS-CoV-2の初期の変異株に感染した人のT細胞応答を調べ、オミクロン株に感染した場合にそのスパイクタンパク質を認識する能力を調べた。Riouたちは、ジョンソン・エンド・ジョンソン社製ワクチンを1回または2回接種した人(計40人)、ファイザー・ビオンテック社製ワクチンを2回接種した人(15人)とSARS-CoV-2に感染して回復したワクチン未接種者(15人)のT細胞応答を調べた。Riouたちは、被験者グループ全体で、CD 4+ T細胞応答とCD 8+ T細胞応答の70~80%が、オミクロン株スパイクタンパク質に対しても維持されることを明らかにした。
南アフリカ共和国でオミクロン株に感染して入院した19人の患者のT細胞応答が、SARS-CoV-2の祖先の変異株、ベータ変異株、デルタ変異株が優勢だった過去のSARS-CoV-2パンデミックの波において入院した患者(それぞれ、17人、16人、16人)と同程度だったことも明らかになった。Riouたちは、オミクロン株の変異が広範に起こっていることが、オミクロン株に対するT細胞応答に及ぼす影響は限定的であり、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質に特異的なT細胞応答の大部分が、このスパイクタンパク質の保存された領域に向けられていることが示唆されていると結論している。
doi:10.1038/s41586-022-04460-3
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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