COVID-19:ハムスターモデルに感染させたオミクロン株の病原性は低かった
Nature
2022年2月2日
ハムスターモデルを用いた研究で、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)オミクロン変異株の病原性が、デルタ変異株とその祖先のSARS-CoV-2変異株より低いことが明らかになった。この結果を示すデータを発表する論文が、Nature に掲載される。
今回、東京大学医科学研究所附属感染症国際研究センターの佐藤佳(さとう・けい)准教授たちは、オミクロン株について、ヒト細胞膜との融合能を解析して、デルタ変異株とその祖先のSARS-CoV-2変異株(B.1.1系統)より融合能が低いことを明らかにした。その原因として、佐藤たちは、オミクロン株の場合、細胞膜との融合を促進するスパイクタンパク質の切断効率が低いという可能性を指摘している。
次に、佐藤たちは、ハムスターモデルにおけるオミクロン株の病原性を調べた。オミクロン株に感染したハムスターの体重は、SARS-CoV-2に感染していないハムスターより有意に減っていたが、デルタ株とB.1.1系統に感染したハムスターの体重を有意に上回っていた。また、オミクロン株に感染したハムスターは、他の変異株に感染したハムスターと比べて、肺機能障害が少なく、いくつかの検査値(皮下酸素飽和度など)は、感染していないハムスターとほぼ同程度だった。また、オミクロン株に感染したハムスターは、他の変異株に感染したハムスターより肺病変が有意に少なかった。
さらに、佐藤たちは、SARS-CoV-2に感染したハムスターから毎日口腔スワブを採取してウイルス産生を調べた。その結果、デルタ株とB.1.1系統に感染したハムスターでは、感染の翌日にウイルスの複製が最大に達し、高レベルのウイルスRNA量が1週間続くことが観察された。これとは対照的に、オミクロン株に感染したハムスターは、ウイルス複製が感染後2~3日でピークに達し、その後、ウイルスRNA量が急減した。
doi:10.1038/s41586-022-04462-1
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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