創薬: 新しい抗真菌薬が多剤耐性の真菌を撃退
Nature
2025年3月20日
多剤耐性病原体に対して強力な抗真菌活性を有する新しい前臨床化合物が発見されたことを報告する論文が、今週のNature に掲載される。マンディマイシン(mandimycin)と名付けられたこの薬剤は、抗真菌作用を持つ細菌産物として知られるポリエンマクロライド系(polyene macrolides)ファミリーの一員である。このファミリーの既知の化合物とは異なり、マンディマイシンは真菌細胞膜の新規ターゲットに結合するため、関連化合物に耐性を持つ様々な病原菌に対して活性を示す。
多剤耐性真菌病原体による感染症は、ヒトの健康にとって深刻な脅威であり、代替治療法を見つける必要がある。細菌は真菌を死滅させる天然産物を産生するように進化し、これらの産物はヒト用の抗真菌薬の開発に利用されてきた。しかし、耐性菌は蔓延しており、従来の抗真菌薬探索戦略(例えば、環境サンプルから発見された天然物の活性を調べる)では、既知のターゲットに結合する化合物の再発見に終わることが多く、その収穫は減少の一途をたどっている。
Zongqiang Wangらは、別のターゲットに結合する可能性のあるポリエンマクロライド系ファミリーの新しいメンバーを同定するために、316,123の細菌ゲノムをスクリーニングし、新規遺伝子クラスターを同定した。そのような遺伝子クラスターの1つは、ポリエンマクロライド系をコードする他の遺伝子クラスターとは異なる進化を遂げているようだった。その後の実験により、その産物であるマンディマイシンは、ポリエンマクロライド系の典型的な標的である細胞膜のエルゴステロールには結合しないことが明らかになった。その代わりに、マンディマイシンは真菌細胞膜の様々なリン脂質と結合することが示された。この作用機序は、臨床的に使用されているアムホテリシンB(amphotericin B)のようなエルゴステロール(ergosterol)を標的とする既存の抗真菌剤に対して耐性を獲得した真菌病原体に対しても有効であることを意味する。著者らは、動物感染モデルを用いて、多剤耐性カンジダ・オーリス(Candida auris;WHOにより優先的真菌脅威種に指定されている)を含む様々な真菌病原体に対してマンディマイシンを試験した結果、アムホテリシンBと比較して、マンディマイシンは有効性が高く、腎毒性が軽減されていることを見出した。
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- Published: 19 March 2025
Deng, Q., Li, Y., He, W. et al. A polyene macrolide targeting phospholipids in the fungal cell membrane. Nature (2025). https://doi.org/10.1038/s41586-025-08678-9
doi:10.1038/s41586-025-08678-9
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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