疫学:ワクチン接種展開中のソーシャル・ディスタンシングはCOVID-19ワクチン耐性を防ぐ可能性がある
Nature Human Behaviour
2022年2月25日
ワクチン接種の拡大と並行してソーシャル・ディスタンシング政策を維持することで、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)のワクチン耐性株の進化を防げる可能性のあることが、数理生物学研究から示唆された。この知見を報告する論文が、Nature Human Behaviour に掲載される。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)が継続する中、焦点は世界的なワクチン接種に置かれており、ワクチン接種率の上昇の結果として、社会活動や経済活動と共に、関連するソーシャル・ディスタンシング政策の緩和が徐々に再開できると期待されている。しかし最近になって、部分的なワクチン耐性を示すSARS-CoV-2変異株(デルタ株やオミクロン株)が出現しており、疾患の大流行を引き起こしている。
今回、Yitzhak Pilpelたちは、6か国(イスラエル、米国、英国、ブラジル、フランス、ドイツ)のワクチン接種データと感染データを使用して、ワクチン接種率とソーシャル・ディスタンシング政策(ロックダウンなど)に反応したSARS-CoV-2の進化について調べた。その結果、ワクチン接種の進行が遅い場合、ロックダウン政策を継続していても、耐性株が出現する可能性が高いことが判明した。一方で、イスラエルに見られるようにワクチン接種が速い場合、住民の大半に接種が行われるまでソーシャル・ディスタンシング政策が維持されれば、耐性株の出現は防げると予測された。つまり、集団ワクチン接種プログラム中に、接触削減によって新たな感染件数を抑えることが、SARS-CoV-2のワクチン耐性株の進化を防ぐために極めて重要であるということになる。
これらの結果は、ワクチン耐性株の進化を防ぐためには、集団免疫が達成されるまではソーシャル・ディスタンシングが必要なことを示している。また、Pilpelたちは、政策担当者はソーシャル・ディスタンシングや接触削減政策(ロックダウンや在宅勤務の推奨など)を、速やかな集団ワクチン接種と共に進めるべきであると推奨している。
doi:10.1038/s41562-021-01281-8
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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