COVID-19:パンデミック下のソーシャルメディアにおける感情の変化を追う
Nature Human Behaviour
2022年3月18日
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)の第一波は、ツイッターやウェイボー(Weibo)上で世界中の人々が発する感情に対して顕著なマイナスの影響を及ぼした一方で、ロックダウンは平均してささやかなプラスの影響をもたらしたことが、6億5000万件の投稿の解析から明らかになった。この知見について報告する論文が、Nature Human Behaviour に掲載される。
COVID-19のパンデミックと関連する政策は、グローバルヘルスや世界経済に影響を及ぼす。こうした影響は、医学データや経済関連データを用いて追跡することができる。一方で、パンデミックが個人の心理学的幸福に及ぼす影響を測定することはそれほど容易ではない。というのも、そのような調査の実施には多額の費用と時間を要する場合が多く、対象集団も限られるからである。
今回、Siqi Zhengたちは、2020年1月~5月に100か国以上の1056万人によってツイッターやウェイボー上に公開された6億5400万件の投稿を用いて、機械学習を使って日々の感情指標を開発した。そしてこの指標を使用して、2020年のCOVID-19パンデミックの第一波中に人々がソーシャルメディア上でどのように感情を表現したかを追跡した。COVID-19の大流行は、調査対象となった全ての国で感情の急速な低下を引き起こし、とりわけオーストラリア、スペイン、英国、コロンビアで大きな低下が見られた。平均すると、ポジティブな感情(任意の国で発せられた感情が定常状態の半分に戻るまでの日数として定義)の回復は緩やかであり、1.2日(イスラエル)~29.0日(トルコ)の範囲であった。対照的に、ロックダウン政策は、大半の国々で発せられる感情にささやかなプラスの影響を与えた。Zhengたちは、この結果は、パンデミックによって大きな被害を受けた国では、ロックダウンのような制限が設けられずにウイルスの増殖を放置していたことで、同程度かより高いレベルの心理的ストレスが生じた可能性を反映しているかもしれないと示唆している。
今回の研究は、ソーシャルメディアから得られたデータが世界規模での感情の変化を理解するのに役立つ可能性のあることを示しており、Zhengたちは、これが政策立案者にとって有用なツールになるかもしれないと示唆している。一方で、Zhengたちは、ソーシャルメディアのユーザーは広範な集団を代表しているわけではないことから、今回の方法は従来型の調査に取って代わるものではなく、並行して用いられるべきであると注意を促している。
doi:10.1038/s41562-022-01312-y
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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