心理学:COVID-19パンデミックになって気前が良くなった
Scientific Reports
2022年4月1日
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の脅威にさらされた人はお金に寛大になったという米国での研究について報告する論文が、Scientific Reports に掲載される。
人間は、重大な危機[戦争、感染症のパンデミック(世界的大流行)、自然災害など]に遭遇すると、利己的になったり、より寛大になったりすることが分かっている。利己的な行動は、不安や自己防衛から生じている可能性があり、COVID-19パンデミックの初期には、買いだめ行動などの利己的行動の実例が見られた。また、危機によって、共同体意識と社会的結束が強化される可能性があるため、より寛大な行動が助長されることもある。こうした行動は「catastrophe compassion」と呼ばれる。
今回、Ariel Fridmanたちは、2つの縦断的データセットを用いて、COVID-19の脅威の存在と寛大さとの関係を調べた。第1のデータセットは、Charity Navigator(慈善団体を評価する非営利組織)が作成した、2016年7月~2020年12月までの米国における69万6942件の慈善寄付に関するデータで、寄付額、寄付者の居住地(郡)などの項目が含まれていた。第2のデータセットは、米国の参加者1003人が独裁者ゲームを行ったときのデータで、このゲームでは、独裁者の役割を割り当てられた人物が、ランダムに選んだパートナーとの間で10ドルを分配する方法を決める。このゲームは、2020年3月~8月まで計6回行われた。COVID-19の脅威は、各郡の日々の死者数に基づいて算定された。
いずれのデータセットの場合も、COVID-19の脅威があると人々の寛大さが増した。COVID-19の脅威下にあった郡の78%で、2020年3月の寄付総額が2019年3月を上回った。これに対して、COVID-19の脅威に直面していない郡では、同期間中に寄付総額が増加したのは55%だった。2020年4月と2019年4月の比較でも同様の結果が見られた。平均すると、郡レベルの寄付総額は、脅威がない場合と比較して、脅威が低い場合で31.6%、脅威が中程度の場合で28.5%、脅威が高い場合で32.9%増加した。2回以上寄付した人は、福祉サービスを直接提供する慈善団体に寄付する傾向が有意に強かった。
独裁者ゲームでは、寄付額(平均配分額2.92ドルからの伸び率)は、脅威がない場合と比較して、低い脅威の下で0.25ドル(+8.6%)、中程度の脅威の下で0.38ドル(+13.1%)、高い脅威の下で0.24ドル(+8.3%)増加した。Fridmanたちは、COVID-19の脅威の存在は全体的に寛大さの増加と関連していたが、脅威のレベルによる寄付額の差はほとんどなかったと指摘している。
doi:10.1038/s41598-022-08748-2
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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