Research Press Release

生態学:農業と気候変動が昆虫の生物多様性に及ぼす悪影響

Nature

2022年4月21日

土地を集約度の高い農業に利用することと過去の気候温暖化との相互作用は、昆虫の存在量の約50%の減少に関連していることを報告する論文が、Nature に掲載される。

気候変動と土地利用の変化は、昆虫の生物多様性に影響を与えることが分かっており、この2つの要因は、相乗的に作用することがある。例えば、自然の生息地を開墾して農地を造成すると、微気候が変化して、気温の極値が上昇することがある。しかし、これらの要因と昆虫の生物多様性との相互作用の影響は、他の動物種の場合ほど十分に理解されていない。

今回、Charlotte Outhwaite、Peter McCann、Tim Newboldは、この知識の空白に取り組むため、気温の変化と土地利用の変化に関するデータを世界の6000地点以上での昆虫の生物多様性に関する20年間のデータと組み合わせ、1万7889種の昆虫(カブトムシ、ハエ、ハチ、チョウ、バッタなど)について、土地利用条件と気候条件の変化を比較した。その結果、土地を集約度の高い農業(作物の多様性が低いこと、またはは家畜の集約度が高いことを特徴とする)に利用し、ベースラインの気温変動を上回る温暖化があった場合には、かく乱が少なく温暖化がゆっくりと進んできた生息地と比べて、昆虫の存在量が49%少なくなり、種の豊かさが27%少なくなることが明らかになった。Outhwaiteたちは、気候変動の結果として昆虫の生物多様性に及ぶ悪影響は、周辺の自然生息地の存在によって緩和されるが、極端な高温の場合には、この緩衝効果はそれほど大きくない可能性があるという見解を示している。

昆虫は、授粉や害虫防除など、生態系において重要な役割を果たしている。昆虫の生物多様性を変化させる要因の理解を深めることは、保全の取り組みの指針となるかもしれない。

doi:10.1038/s41586-022-04644-x

「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。

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