心理学:テレビ電話を介した交流では創造力が低下することが実証された
Nature
2022年4月28日
テレビ電話での交流は、対面での交流と比べて、独創的なアイデアが生まれにくいことが実証された。この研究について報告する論文が、Nature に掲載される。今回の知見は、バーチャルな交流において協働してアイデアを生み出そうとすると、認知コストが発生する可能性を示唆している。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)において、数百万人の従業員が無期限に在宅勤務し、テレビ会議技術を使用してバーチャルに協働せざるを得なくなった。米国では、パンデミックの収束後に勤務日の20%が在宅勤務になることが複数の研究で推定されており、グーグル社、マイクロソフト社、JPモルガン社、アマゾン社などのさまざまな業界の大手企業は、在宅勤務規則の柔軟化を図っている。しかし、対面での交流を減らすことの影響と、それがイノベーションにどのような影響を及ぼし得るかについては、研究が進んでいない。
今回、Melanie BrucksとJonathan Levavは、協働してアイデアを生み出す作業に対して、テレビ電話の使用がどのような影響を及ぼすかを調べることを目的として、ある通信インフラ企業の世界5か国の事業所(ヨーロッパ、中東、南アジア)で1490人の参加者を採用した。これらの参加者は、無作為に2人1組のペアに組分けされ、それぞれのペアは対面、またはテレビ電話を介して製品のアイデアを出し合った後、会社の将来の製品イノベーションとなるアイデアを1つ選んで提出することを課題として提示された。その結果、対面で協働したペアの方が、バーチャルで協働したペアよりも多くのアイデアを生み出し、独創的なアイデアを生み出した。しかし、推進すべきアイデアを選ぶ際には、対面の場合とテレビ電話の場合に差は見られなかった。これらの結果は、視標追跡データを用いた室内実験でも追認され、テレビ電話を用いたペアは、部屋を見回す時間よりも画面上の相手を直視する時間が長かった。
著者たちは、テレビ電話の場合、画面上の相手とのコミュニケーションに注意が集中するため、認知の向かう対象が狭くなり、独創的なアイデアが生まれにくくなるという考えを示している。しかし、独創的なアイデアの批判的評価は、アイデア生成とは異なる認知過程を用いるため、認知の向かう対象が狭くなっても影響を受けない。今回の知見から、対面での交流は創造的な仕事に役立つ可能性があるが、その他のタイプの協働作業は影響を受けないことが示唆されている。
doi:10.1038/s41586-022-04643-y
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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