考古学:先住民コミュニティーが管理するカキ漁業は5000年以上も存続した
Nature Communications
2022年5月4日
北米とオーストラリアでは、先住民のコミュニティーによって管理されたカキ漁業が、ヨーロッパの移住民が入植するまでの5000年以上の間、順調に存続していたことを示唆する論文が、Nature Communications に掲載される。今回の研究では、カキ漁業が管理されていただけでなく、文化的伝統にも織り込まれていたことと、こうしたカキ漁業が今後の漁業管理に役立つ情報を提供するかもしれないことが示された。
カキは、沿岸生態系の健全性を示す重要な指標であり、世界中の地域社会で文化的、経済的に重要な存在となっている。しかし、19世紀に存在していたカキ礁域は、21世紀初頭までに80%も失われてしまった。現在のカキ漁業の管理戦略は、主として過去200年間のデータに依存しているが、この期間中には、乱獲、海洋汚染、外来種との競争と生息地の減少によって世界の数多くの漁業が崩壊した。世界の生態系を理解する上で過去のデータの重要性がますます認識されているにもかかわらず、先住民のコミュニティーから得られた知識や考古学的知識は、保全と生態学の分野で顧みられないことが多かった。
今回、Leslie Reeder-Myersたちは、オーストラリア東部、北米の太平洋沿岸と北米の大西洋・メキシコ湾沿岸における過去のカキ漁業を調べた。今回の研究では、各地域の過去の海面水位と水揚げ高の記録を、カキの個体数とカキの生息地の地理的分布に関する考古学的記録と、先住民コミュニティーによるカキの水揚げ、管理、養殖に関する民族歴史学的記録と組み合わせた。Reeder-Myersたちは、先住民コミュニティーによって管理されたカキ漁業が広範囲に存在し、5000~1万年間存続したという見解を示し、カキが、積極的に管理され、文化と食事において中心的な役割を果たしたという考えを示している。Reeder-Myersたちは、この考えが、移住民の入植以前の沿岸生態系を「原始的」あるいは「野生状態」と記述した学説と矛盾していることを指摘し、むしろ先住民コミュニティーによってうまく管理された資源だったとする考えを提起している。
Reeder-Myersたちは、今後のカキ礁の管理では、先住民コミュニティーとそのメンバーを中心に据えて、カキの水揚げ、回復、管理のためのインクルーシブで公正な成功戦略を構築する必要があるという考えを示している。
doi:10.1038/s41467-022-29818-z
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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