気候変動:牛肉を微生物タンパク質に置き換えることの環境への恩恵を検討する
Nature
2022年5月5日
このほど実施されたモデル化研究で、2050年までに世界の牛肉消費量の20%を発酵由来の微生物タンパク質に置き換えることで、年間の森林破壊とそれに伴う二酸化炭素排出量を半減させ得ることが明らかになった。ただし、置換率がこれ以上高くなると、恩恵が目減りする可能性があることも指摘されている。今回の研究について報告する論文が、Nature に掲載される。
反芻動物の肉を消費することが環境に及ぼす悪影響(温室効果ガスの排出や土地利用の変化など)が明らかになるにつれ、動物肉を含有しない代替品が、健康と持続可能性の向上のために奨励されている。マイコプロテイン(市販の食肉代替品)のような発酵由来微生物タンパク質に関する先行研究では、環境に恩恵をもたらす可能性があると推論されていた。ただし、このような評価方法は、静的な評価方法であることが多く、スケーラビリティーへの制約がある。
今回、Florian Humpenöderたちは、糖を原料とする微生物タンパク質を食肉用牛肉の一部の代替品とすることによって、土地利用の観点での環境影響が2050年までにどの程度生じる可能性があるのかを世界規模で調べて、社会経済的要因(畜産物需要の増加、人口増加、所得増加など)を考慮に入れた。全般的に言うと、2050年までに世界の1人当たり牛肉消費量の20%が微生物タンパク質に置き換わると、年間の森林破壊とそれに伴う二酸化炭素排出量は、このような食肉の代替を行わない基準シナリオと比べて、56%削減されると推定された。これに対して、食肉の代替率が、このレベルを超えると、土地節約効果が直線的に増加しなくなると考えられている。これは、農業生産構造のいろいろな変革が必要になるためだと、Humpenöderたちは推測している。
今回の結果は、以前の研究によって得られた知見を補足するだけでなく、牛肉を微生物タンパク質に置き換えることによる土地利用の観点での環境影響の可能性をこれまでより動的に予測しており、環境への圧力を構成する諸状況をより深く考慮したものだとHumpenöderたちは結論付けている。
doi:10.1038/s41586-022-04629-w
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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