免疫学:SARS-CoV-2 mRNAワクチンのブースター接種によってオミクロン株に対する防御が増強される仕組み
Nature
2022年4月21日
重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)の初期の変異株のために開発されたmRNAワクチンの3回目の接種を受けると、2回の接種しか受けていない場合と比べて、免疫系の広範囲のウイルス中和抗体(オミクロン変異体を中和する抗体を含む)を産生する能力が高まることが明らかになった。今回の研究で得られた知見は、当初流行したSARS-CoV-2株に基づいたmRNAワクチンのブースター接種が、新たに出現した変異株による重症化を防御する作用を生み出す仕組みを説明する上で役立つ。この知見を報告する論文が、Nature に掲載される。
今回、Michel Nussenzweigたちの研究グループは、mRNAワクチンを3回接種した42人(うちモデルナ社製8人、ファイザー社/バイオンテック社製34人)を対象として、毎回の接種後に採取した血液検体を分析した。これらの参加者の中には、過去にSARS-CoV-2に感染したことのある者はいなかった。この分析の結果、3回目のワクチン接種を受けると、迅速に応答してSARS-CoV-2に対する抗体を産生する記憶B細胞の「守備範囲」が、2回接種の場合より拡大したことが分かった。記憶B細胞によって産生された抗体は、2回目のワクチン接種後に産生された抗体と比べて、SARS-CoV-2中和活性の幅と効力が拡大した。これらの抗体の50%以上は、オミクロン変異体を中和することが明らかになった。
3回目の接種後に抗体の効力が高まった原因について、Nussenzweigたちは、新たに出現した記憶B細胞が産生した抗体が、2回目の接種後に産生した抗体よりも受容体結合ドメイン(SARS-CoV-2において宿主細胞への侵入を容易にする部分)のより多くの領域を標的にしたことを指摘している。また、Nussenzweigたちは、3回目の接種によって複数のSARS-CoV-2変異体に対する抗体の応答性が高まるが、常にブレークスルー感染を予防できるわけではないと付言している。
doi:10.1038/s41586-022-04778-y
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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