COVID-19:英国の健康データに基づいたlong COVIDの症例評価
Nature Communications
2022年6月29日
英国での縦断的健康調査の結果と電子健康記録のデータに基づいた研究で、long COVIDの症状を自己報告した者の中で多かったのが、女性、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)以前に全体的な健康状態が良くなかった者、50~60歳の者だったことが明らかになった。この研究について報告する論文が、Nature Communications に掲載される。
long COVID(急性期後COVID-19症候群)は、COVID-19発症から4週間後にCOVID-19の症状を1つ以上有することと通常定義されている。long COVIDは、広範に報告されているが、その罹患率とリスク因子は十分に理解されていない。その理由の1つは、long COVIDに関する研究が、比較的小規模のサンプルに基づいており、long COVIDを定義するために用いられる症状が研究によって異なることが多いため、研究結果をさらに広範な集団に一般化できない場合があることだ。
今回、Ellen Thompsonたちは、long COVIDの症例を調べるため、COVID-19パンデミック以前に確立されていた英国での集団対象の縦断的健康調査(10件)においてCOVID-19の自己報告をした6907人のデータを使用した。Thompsonたちは、それと並行して、2021年春に電子健康記録から収集したCOVID-19と診断された者(110万人)のデータも利用した。縦断的健康調査の結果からは、推定COVID-19症例で発症から12週間以上にわたって症状の自己報告があったものの割合が7.8~17%の範囲にあり、「衰弱性」の症状を報告した者の割合が1.2~4.8%であったことが明らかになった。また、電子健康記録のCOVID-19症例では、その後にlong COVID関連の診断や専門医などへの紹介があった事例は、わずか0.4%だった。ただしThompsonたちは、医療機関でlong COVIDの診断コードが導入されたのは2020年12月だったことを指摘している。long COVIDの自己報告件数は調査によってばらつきがあったが、Thompsonたちは、long COVIDのリスクが増加したことは、調査対象者の年齢を最高70歳まで引き上げたことと関連しているという考えを示している。また、縦断的調査と電子健康記録の両方において、リスク因子として、女性、パンデミック以前のメンタルヘルスや全体的な健康状態が良好でないこと、肥満や喘息患者ということも特定された。
Thompsonたちは、今回の研究で因果関係の推論はできなかったが、研究で得られた知見からは、long COVIDのリスクのある集団をさらに研究する必要性が明確に示されたという注意点を指摘し、さらに代表集団を対象とした研究を行って、推論を改良し、医療計画を支援する必要があるという考えを示している。
doi:10.1038/s41467-022-30836-0
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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