社会学:完全リモートワークは研究者の間のグループ横断的なつながりを減少させた
Nature Computational Science
2022年8月23日
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)期間中にリモートワークに移行し、物理的近接性が失われた結果、研究者同士の偶然の出会いによって形成されるタイプのつながりが減少したことを明らかにした論文が、Nature Computational Science に掲載される。これらの知見は、ハイブリッドワークによって生じ得る共同研究やコミュニケーション上の問題を、組織が適切に予想し、対策を講じるのに役立つことが期待される。
COVID-19のパンデミックにより機関がリモートワークへと大きく舵を切ったことで、コミュニケーションの主要な推進力であった物理的存在が排除され、個人の間で新しいアイデアを流動させていた職場での偶然の出会いが制限された。機関が「ニューノーマル」へと移行し、ハイブリッドワークポリシーを実施するに当たっては、生産的な職場環境を作り出すために必要な対面での最小限の交流を評価することが重要になる。
Daniel CarmodyとMartina Mazzarelloたちは今回、2019年12月から18か月にわたって北米の大学の研究者2834人の大規模なメールネットワークを分析することにより、物理的近接性が人間のコミュニケーションに及ぼす影響を調べた。著者らは、完全リモートワークへの移行が義務付けられて物理的近接性が失われた結果、相互に接点のない研究者の間に新たに生じた紐帯の数が即時かつ持続的に39%も減少したことを明らかにした。ハイブリッドワークでは、新たに生じる社会的紐帯の数はわずかしか回復せず、オフィスに戻ったからといってすぐに社会的なつながりが回復するわけではないことが示唆された。研究チームは実験結果に基づいて、物理的近接性の欠如が紐帯を失わせる原因であることを直接示すモデルも作成した。
これらの知見は、将来の研究キャンパスおよび職場環境の設計や、物理的オフィスで生じる相互作用を再現するための仮想技術の開発に示唆を与えるかもしれない。
doi:10.1038/s43588-022-00296-z
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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