古生物学:初期人類が二足歩行を始めた時
Nature
2022年8月25日
既知のヒト族の中で最古の部類に入るサヘラントロプス・チャデンシス(Sahelanthropus tchadensis)は、700万年前に二足歩行していたことが、太腿と前腕の化石の分析によって明らかになった。この知見は、同様の結論に至った過去の分析結果が基になっている。今回の研究について報告する論文が、Nature に掲載される。
2001年にチャドのトロス・メナラで大量の化石が発見され、初期ヒト族(現生人類と近縁の絶滅種を含む分類群)の新種「サヘラントロプス・チャデンシス」の命名につながり、年代測定によって約700万年前のヒト族種であることが判明した。また、ほぼ完全な状態で発見された頭蓋骨の分析により、サヘラントロプスが2本足で歩行していたこと(「直立二足歩行」というヒト族の定義的特徴)の可能性が示唆された。この仮説については、同時期に同じ地域で発掘された腕と脚の骨に関する研究報告が既になされており、それを用いた検証の機会が得られた。
今回、Guillaume Daver、Franck Guyたちは、2001年にサヘラントロプスの化石が発見された場所で出土した左の太腿の骨(大腿骨)と1組の前腕の骨(尺骨)を分析した結果を明らかにした。大腿骨の解剖学的構造は、約700万年前にサヘラントロプスが地上で二足歩行していたことを示しており、頭蓋骨から得られた証拠による予測を裏付けている。それに加えて、Daverたちは、尺骨の特徴が、木登りへの適応の特徴である形質と一致するという点も慎重さを保ちつつ強調した。例えば、尺骨の機能的様式は、サヘラントロプスが、おそらく何らかの形でつかまったり、四肢を不規則に動かしたりして木を登り降りしていたことを示唆している。
以上の証拠を総合すると、ヒトとチンパンジーが分岐した直後に、初期人類が、2本足で歩く能力を備えるようになり、木登りができるようになる骨の特徴も保持していたことを示唆しているとDaverたちは結論付けている。
doi:10.1038/s41586-022-04901-z
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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