Nature Human Behaviour:研究の再現性と複製可能性を検証する大型イニシアチブが始動
Nature Human Behaviour
2024年1月26日
Nature Human Behaviour(以下「本誌」)で過去に発表された研究の再現性と複製可能性を検証するための大型イニシアチブが、今週、発表された。本誌編集長のStavroula Koustaは、本誌とInstitute for Replicationとの新たなパートナーシップを発表するEditorialの中で、「再現性と複製可能性を検証することの価値は、この千年紀の初めと比べてはるかに強く認識されるようになっているが、選別の厳しい学際的ジャーナルで発表された研究を対象として、より大規模に再現性と複製可能性を検証するというイニシアチブは、これまで例がなかった。本誌としては、このイニシアチブとその成果が、研究の信憑性を強化することに寄与し、再現性と複製可能性を検証する取り組みの価値と認知度を高め、透明性と厳密性の向上につながることを期待する」と述べている。
研究コミュニティーにとって、厳密性、再現性、複製可能性は、この15年間でますます重要になってきている。不適切な研究の進め方、出版バイアス、透明性不足の広がりと影響に注目した研究が行われ、複製可能性の検証に対する認知度も高まってきている。再現性の検証では、同じデータを使用して同じ結果が得られるかに照点が合わせられているが、複製可能性の検証では、同じ方法と異なったデータを用いて研究が再実施される。
本誌は、創刊以来、高い水準で実施された複製可能性研究やその他の研究に関する論文の投稿を、結果の如何にかかわらず(研究者はそもそも研究の結果を制御できない)歓迎してきた。本誌は、創刊時にRegistered Report(査読付き事前登録研究論文)という方式を採用し、2021年にプログラムコードの査読を導入し、データとコードの利用可能性ステートメントの提出を義務付けて、本誌で発表された研究の再現と複製を可能にした。今回、本誌は、2022年に研究の再現と複製を社会科学の分野で日常化させることを目的として創設されたInstitute for Replicationとのパートナーシップを通して、2023年以降に本誌で発表された研究の大規模な再現と複製を実現することを目指す。
このイニシアチブに関する計画の詳細は、上記のEditorialと、同時掲載されるAbel Brodeur(Institute for Replicationの創設者)らのCorrespondenceに記述されている。本誌は、このプロジェクトのために選定された論文の監視に関与しないが、データとコードの共有プロセスが円滑に進むようにInstitute for Replicationと協力する。また、本誌は、このプロジェクトのために選定された論文の著者に対して、研究の複製を行う人々を支援することを要請する。本誌とInstitute for Replicationとの取り決めで、本誌は、このプロジェクトの開始時から18カ月間の複製可能性と再現性の検証を記述したメタ研究論文の出版(査読後)を検討することに合意した。個別の複製可能性の検証に関する論文の掲載も検討されることになっており、検証結果がこれまでに発表された研究に異議を唱えたり、結果を明確にしたりする内容であれば、本誌の現行の掲載基準を満たしていることを条件として、単独の論文または発表後の解説(Matters Arising)として掲載される。
doi:10.1038/s41562-024-01818-7
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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