工学:新しいスマートファイバーテクノロジーには脱帽するしかない
Nature
2024年2月1日
電子部品を内蔵した繊維を作製するための新しい方法について報告する論文が、今週、Natureに掲載される。この方法は、ウエアラブル電子機器に使用できる可能性がある。適用可能例としては、信号機の点灯色の変化を感知して視覚障害者を補助する帽子や、フレキシブルな心臓モニタリングデバイスなどがある。
信号を検出して処理することができるウエアラブル電子機器は、半導体デバイスを組み込んだ繊維を使って作製できる。しかし、こうした繊維の製造過程においては、繊維の性能を制限する欠陥が生じることがある。今回、Lei Weiらは、この繊維製造過程を評価して、破断や欠陥が発生する過程を明らかにした。そしてWeiらは、この情報を用いて、加工技術を改良し、半導体と繊維材料の組み合わせを変えることで、光電子特性を有する高性能なフレキシブル繊維を作製した。
次にWeiらは、こうした繊維材料の性能を実証するために、一連の実験的デバイスを作製した。例えば、この繊維を使って、路上の信号機の点灯色を感知して視覚障害者を補助できる帽子を編み上げた。この帽子が検出した光信号は携帯電話に送信され、点灯色が赤から緑に変わるとユーザーが通知を受けた。Weiらはまた、この繊維を使って織物にして、市販されている心臓モニターと同等の性能を持ち、硬質のセンサーよりも手首にフィットするという利点のあるリストバンド型のウエアラブル心臓モニターを作製した。この繊維は、圧迫に対する耐久性に優れ、防水性があることが実証され、水中での使用に適していることが明らかになった。
同時掲載のNews & Viewsでは、Xiaoting JiaとAlex Parrottが、工業的使用に即応できることがこの技術の強みだと指摘している。また、「これらの繊維を製造する装置には、電気通信産業において商用光ファイバーを製造するために使用されるファイバー延伸機が含まれている。こうして製造された繊維は、繊維産業で既に広く用いられている装置を使って編み上げたり、布地に織り上げたりできる」と述べ、今回の研究によって「日常の衣服にマイクロコンピューターを組み込むことに向けて大きく前進した」と結論付けている。
doi:10.1038/s41586-023-06946-0
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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