惑星科学:若い火星は構造学的にも火山学的にも活発だった可能性がある
Nature Astronomy
2024年2月13日
火星には、初期形成の後、およそ35~40億年前に活発な火山活動と地殻再循環の時代が存在した可能性がある。このことを報告する論文が、Nature Astronomyに掲載される。
地球とは異なり、現在の火星には、火山活動や地殻活動はほとんど存在しない。さらに、火星地表のほぼ半分は35億年以上前のものであり、このことは、それ以降、広範囲の地殻再循環(地球での地殻活動のように表面物質がマントルへと再循環される、通常はテクトニクスによって駆動される現象)が起こっていないことを示している。最近の発見からは、このことがいつも当てはまるわけではないことが示唆されているが、火星の形成後の最初の10億年間の地質学的活動は、現在もよく分かっていない。
今回、Joseph Michalskiらは、マーズ・グローバルサーベイヤー、マーズ・オデッセイ、マーズ・リコネサンス・オービターなどのさまざまな火星探査機から得られたリモートセンシングデータを用いて、火星の南半球にあるエリダニア地域を形態学的、鉱物学的に研究した。エリダニア地域には、古代の火星での磁場の最も強力な地殻の残存物と、火山活動のさまざまな痕跡がある。Michalskiらは、新たに63例異なる4種類の火山(火山ドーム、成層火山、火砕性の盾状地、カルデラ複合体)を特定した。これらは、エリダニア地域だけでもさらに数百例ある可能性があり、およそ35億年前の地質活動が活発だったときの残存物であると考えられる。
この一連の観測結果は、垂直方向のテクトニクス(地球における全体的なプレートテクトニクスの前駆的な地殻変動過程の一種)によって駆動される地殻再循環が初期の火星にも存在していたことと矛盾しない。このような多様な火山構造は、これまで考えられていたよりも古代の火星に広く存在していた可能性がある。Michalskiらはさらに、火星で観測されたこうした活動の残存物を生じる環境が、地球に対して提唱されている生命の熱水起源シナリオに非常に類似している可能性を示唆している。
doi:10.1038/s41550-023-02191-7
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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