エネルギー:米国内の原油・ガス生産によって排出されるメタンの測定
Nature
2024年3月14日
米国内の6地域での原油・ガス生産は、平均して供給量の2.95%を大気中にメタンとして排出している可能性があることを明らかにした論文が、Natureに掲載される。この排出は、政府見積の3倍であり、環境破壊の損害額が約93億ドル(約1兆4000億円)に達する可能性がある。
原油・ガス生産からのメタン排出量を正確に測定し、抑制することは、気候危機に対処するための重要な一歩だ。しかし、最新の複数の研究で示された推定値はそれぞれ異なっており、その原因として、測定技術や、公式計算から欠落している排出源を特定するための航空機による調査に限界があることが挙げられる。
今回、Evan Sherwinらは、米国内の原油・ガス生産地域(6地域)で実施された15回の空中測定によって得られた赤外線分光データを使って、メタン排出を定量化した。調査区域には、陸上油田の52%とガス田の29%が含まれていた。次にSherwinらは、この空中測定データセットと、メタン排出源候補地(例えば、油田/ガス田地帯、圧縮ステーション、ガス処理プラント、パイプライン)からのシミュレーションによる推定排出量を組み合わせた。
今回の分析によって、Sherwinらは、メタンの排出を平均2.95%と算出した。Sherwinらは、サンプル地域によってメタン排出率が大きく異なっていたことを指摘している。さらにSherwinらの分析から、メタン総排出量の比率が、2021年のペンシルベニア州の高生産性地帯の0.75%から2018~2020年のニューメキシコ州の高生産性地帯の9.63%までの範囲内であることが明らかになった。
Sherwinらは、今回の研究で対象となった地域は、推定で年間620万トンのメタン排出に寄与していると考えられると述べている。こうしたメタン排出は、約93億ドル相当の社会的・環境的損害をもたらしている可能性があり、これは環境保護庁の米国温室効果ガスインベントリで推定されている金額の3倍に当たる。さらにSherwinらは、このメタンの排出によって石油会社とガス会社が、10億8000万ドル(約1600億円)の市場喪失を被る可能性があると推測している。
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シュプリンガー・ネイチャーは、国連の持続可能な開発目標と、学術論文誌や書籍に掲載されている関連情報や証拠の認知度を高めることに尽力しています。このプレスリリースに記載されている研究は、SDG 12(つくる責任つかう責任、Ensure sustainable consumption and production patterns)およびSDG 13(気候変動に具体的な対策を、Climate Action)に関係しています。詳細については、こちらを参照してください。(https://press.springernature.com/sdgs/24645444 )
doi:10.1038/s41586-024-07117-5
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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